|
F.E.R.C Research Report - File No.1880
オーパーツ アショカ・ピラーの謎を追え!

1999/05/23 報告 報告者:吉川 美佐、和田 栄一、片山 健
遺跡の中でも、当時では考えられない高度な技術を使ってできているものや、最近発明された知識であるにもかかわらず、何千年も前の遺跡に書かれているもののことを、"オーパーツ"、場違いな遺物と呼んでいる。
インドのメラウリにあるイスラム教寺院「クトゥブ・ミナール」には、アショカ・ピラーと呼ばれる、高さ6.9m、直径44cm、重さ6トンの鉄柱がある。サンスクリット語の碑文や、鉄柱頭の部分がアマラカ様式であることから、1500年前にアショカ王により平和祈願を目的として製作されたものと推定されている。この鉄柱に背中を押しつけ、両手を回してつかむと幸運に恵まれるという言い伝えがある。
そして驚いたことに、この鉄柱は、1500年間全くサビていないというのだ。
日本鉄鋼協会の前田滋博士によると、風雨にさらされた鉄が、1500年間もサビないことは考えられないという。鉄は酸化された状態の方が安定するため、すぐに酸素や水と反応してサビを作り出す。鉄の原料である鉄鉱石は自然界に酸化鉄の状態で存在し、そこから人工的に酸素を奪って鉄にしているのである。アショカ・ピラーがある地域は河川に近く湿度も高いので、気候が原因とは考えにくい。また、メッキが施されたり、はがれたりした痕跡もない。西暦670年に建立された法隆寺には、黒サビによって守られた 1300年間サビなかった釘が使われている。酸化して発生するサビは赤サビと呼ばれる。黒サビは赤サビと異なり、非常に緻密な構造で空気や水の分子の通過を妨げて、鉄を赤サビから守る保護膜の働きをし、半永久的な剛性を持つ。しかし、自然な状態で発生することはなく、700度以上の高温で熱し、急激に冷やす作業を繰り返し行って初めてできるものである。クレーンもない当時、アショカ・ピラーにこのような作業ができたとは考えにくいのだ。
インド国立物理研究所のアシュク・クマール博士の調査では、当時一度に精製できる鉄の量は20〜30キロであるため、アショカ・ピラーは柔らかい円盤形の板を重ねハンマーで叩いて結合させたという仮説をたてた。鉄を熱して何度も叩くと、硫黄やマンガンなどの微量な不純物が叩き出されて、鉄の純度が上がりサビにくくなるという。しかし、その後の調査で鉄柱の純度は99.72%と判明。この程度の純度では、長い間に確実にサビてしまう。
実は、アショカ・ピラーの鉄柱がサビない原因は純度の高さではなく、不純物であるリンにあった。熱い鉄を叩くと鉄に含まれるリンが表面に押し出されて、鉄と結合してリン酸鉄を作り出す。それが表面を覆って防サビ効果を上げていたというのである。インドで産出される鉄鉱石のリンの含有量は、オーストラリアや南アフリカに次いで多いことが分かった。さらに、古代インドでは鉄を熱する際に、リンを含むカッシア・アウリキュラータという植物の根を炉の中に加えていたという。つまり、アショカ・ピラーは鉄を叩いて作る製鉄技術とリンを含む鉄鉱石、カッシア・アウリキュラータの根という要素が重なってできたインドの歴史的遺産と考えられるのである。
|