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Research Request No.1320

地中海の異常現象を調査せよ!
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2002/07/14 報告 報告者:柏木 康一郎、伊達 徹、大澤 亮、増田 由紀夫、藤川 優子


イタリアで突如、漁獲高が減少する謎の事態が起きた。FAO・国際連合食糧農業機関によると、フランスやモナコなど地中海に面した各国でも漁獲高が激減したという。

現在と過去の地中海の海中映像を比較したところ、過去の海底には魚や珊瑚などが多く見られた。特にポシドニアと呼ばれる海草が豊富に生息し、この群生地が微生物など海洋生物の住処となることで、豊富な魚介類を育んでいたのだ。ところが、現在の海底には、そのポシドニアは一切見られず、魚介類の姿も目にする事はできない。その代わりに、別の鮮やかな緑色の美しい海藻が延々と広がっているだけである。そしてニース大学で海洋生物を研究するアレクサンドル・メネーズ博士によると、この美しい海藻「イチイヅタ」が地中海の海底で異常繁殖したため、魚たちが消えてしまったのだという。

「イチイヅタ」は、イワヅタ科に属する熱帯性の海藻で、カリブ海などの暖かい海に自生し、観賞用として水槽で栽培されることもある。実はこの「イチイヅタ」には微弱な毒性があり、その付近では微生物が生息しにくくなるという。つまり、このイチイヅタが大繁殖することで微生物が減り、その海域で微生物をエサとしていた小魚、さらには中・大型魚が、食物連鎖の順序に従い餌場を求めて他の海域へと姿を消していくと考えられるのだ。だが、地中海では冬季には水温が摂氏10℃以下に冷え込むため、熱帯性の海藻「イチイヅタ」は生息できないはずである。そこでカリブ海と地中海でそれぞれ採取した「イチイヅタ」のDNAを照合したところ、地中海の「イチイヅタ」は人為的な要因で変種と化したものである可能性が浮上した。

実は1970年代後半、ドイツ・シュツットガルトの水族館が、「イチイヅタ」を観賞用として導入した。だがこの美しい海藻を維持するためには、水槽内で雑菌が繁殖しないよう海水をこまめに交換する必要がある。その作業には莫大なコストがかかるため、この水族館では、水槽の海水に直接紫外線を照射する殺菌処置を施したという。その試みは成功し、イチイヅタの美しさは瞬く間に評判となって、ヨーロッパ中の水族館に広まったというのだ。しかし、水を殺菌するための紫外線は水槽内の「イチイヅタ」にも照射されていた。そのため、遺伝子構造に何らかの変化を与えてしまい、全く新しい「変種イチイヅタ」が誕生してしまったと考えられるのだ。この「変種イチイヅタ」は、地中海においても難なく越冬できる耐寒能力を備えた。さらに、数mmの個体片からでも発芽する無性生殖が可能となり、自らをクローン繁殖させる能力を身に付け、同時に、生殖に用いられるエネルギーを成長力へと転化して、かつてない巨大化を遂げたのというのである。

1984年、メネーズ博士がモナコの沿岸で発見した「変種イチイヅタ」の群生はわずか1uであったが、2001年には、スペインやクロアチア、さらには、アメリカ西海岸やチュニジアなど、広範囲に渡ってその繁殖が確認されたという。 東京大学海洋研究所の小松助教授が行った調査によると、日本でも多くの水族館において「変種イチイヅタ」と酷似した海藻が生息し、能登の沿岸では海中に自生する「変種イチイヅタ」の群生が発見されたという。また小松助教授によると、日本近海は地中海よりも水温が高く、海洋生物を育てる栄養塩も豊富に存在するため、「変種イチイヅタ」の繁殖に適しているという。また、日本沿岸には、アマモという海草による藻場が広範囲に分布するため、そこに漂着した「変種イチイヅタ」が大繁殖する可能性は高いと考えられる。さらに、欧米では「イチイヅタ」に対して厳しい規制が定められているが、日本は規制が皆無で、「イチイヅタ」を手軽に入手することさえ出来る。つまり、「変種イチイヅタ」にとって理想的な繁殖条件を持つ日本では、地中海をはるかに上回る被害が予想されるのである。仮に今後、日本沿岸で「変種イチイヅタ」のコロニーが出現し、魚たちの住処である藻場を死滅させてしまうと、魚介類は軒並み他の海域へ移動してしまい、日本の近海漁業が成立しない状態へと陥ってしまう可能性があるのだ。

この恐るべき「変種イチイヅタ」の対策として、最新の研究により「ウミウシ」が注目されている。「ウミウシ」の中には、本来「イチイヅタ」と同じ場所に棲息し、「イチイヅタ」だけをエサとする種が存在する。これを大量に海に放流し、付近一帯の「変種イチイヅタ」を全滅させようというのだ。 メネーズ博士によれば、このウミウシは200匹で1日あたりおよそ1uの「変種イチイヅタ」を食べ、さらに驚くべきスピードで増殖するという。また、このウミウシは寒さに弱く、冬に水温が低下すると死滅するため、生態系への影響は最小限に抑えることができると期待されている。つまり、この小さなウミウシに最後の望みがかけられているのだ。


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