悪質詐欺は何故なくならないの!?(第1回)
卑劣で悪質な詐欺って、後を絶ちませんよね。
中でも、昨今最も問題になっているのは、言わずと知れた振り込め詐欺の被害。
他人事と思っている方も少なくないかもしれませんが、
都内だけでも去年1年間に起きた振り込め詐欺の被害は3718件、
被害総額は60億円近くにも上ると言うから驚きです。
爆発的な被害増加は勿論、都内に限りません。
そこで、去年10月、警察庁が打ち出したのが一大抑止キャンペーン。
全国のATM8万か所以上に機動隊員ら警察官6万人近くを張り付かせるなど
徹底した人海作戦に出たのです。
この作戦は顕著な成果を出しました。
10月の被害総額はピーク時に比べると半減したのです。
しかし、それでも全国で1297件の被害が確認され、総額15億7千万円以上が奪われました。
なぜ被害がなくならないの?
その答えを出すのはなかなか容易なことではありません。
警察官らの人海作戦にも、さすがに予算・体力いずれの面でも限界があります。
また、犯罪者側の手口の巧妙化というのも非常に頭が痛い部分です。
例えば、全国警察が人海作戦を実行した去年10月以降、
詐欺グループはATMを避けて、
バイク便や宅配便を装う「手渡し」や
郵便小包「エクスパック」に現金を入れ、私設私書箱業者あてに郵送させるといった
新たな手口にシフトするようになりました。
人海作戦をするにも別の対策を迫られることになったわけです。
そんないたちごっこを繰り返す中、果たしてどうしたら被害をゼロに近づけることができるのでしょうか。
警察幹部らに取材をして私が感じたことは、
ざっくり言うと、「被害者対策」と「被疑者対策」を分けて、両面から行わないと駄目なんじゃないか、ということです。
振り込め詐欺のうち、特にオレオレ詐欺の被害者の85%は60歳以上、しかも、その7割が女性だそうです。
子供や孫と離れて暮らす高齢者の女性が狙われているわけです。
お年寄りに話を聞くと、
「しばらく会っていない孫からの電話だったら
それだけで嬉しくて役に立ちたいと思ってしまう。
冷静でいられなくなってしまう」
と言います。
肉親の情につけこんだ卑劣な犯行であると言えると共に、
孤独な高齢者たちの現実にも目を向ける必要性を感じずにはいられません。
そうした孤独な高齢者たちを支え、
「若い者にだまされてたまるか!」という意識を植え付けることが
被害者対策として急務なのではないでしょうか。
一方の被疑者対策ですが、
これまでに捕まった被疑者らを見ると大半は20代や30代前半の若者だそうです。
振り込め詐欺はグループで行われることが多く、
大きな組織になると暴力団らとつながっているわけですが、
そうした組織上部の人間、「主犯格」はなかなか捕まりません。
逮捕される「下っ端」は主犯格の顔も名前も知らないケースが多く、
いわゆる「突き上げ捜査」は難しいわけです。
主犯格を捕まえなければ手を変え品を変え、詐欺がなくならない、という道理はあります。
その対策は非常に重要です。
でも、「実際に捕まっている下っ端たち、そんな存在を無くしていく、というアプローチも必要だし、そのほうが容易だ」
と説く警察庁関係者がいました。
振り込め詐欺で捕まった「下っ端」の若者たちというのは、
万引きやひったくり、といった、犯罪の入り口とも言える「軽微」な犯罪で
逮捕や補導歴のある者が安易に手を染めたケースがかなり多いのだそうです。
前述の警察庁関係者は私にこう言いました。
「要は、『割れ窓理論』の実践が有効なはずなんですよ」。
「割れ窓理論」とは、建物の窓ガラスが割られてそのまま放置しておくと、
その建物は管理されていないと認識され、さらに割られる窓ガラスが増え、
次第に建物全体が荒廃し、ついには地域全体が荒れていく、という理屈です。
この理論を一躍有名にしたのが、NYのジュリアーニ市長でした。
ジュリアーニ市長は、この理論を採用してNYの街角から割れた窓を一掃し、
警察官に徹底したパトロールと軽微な犯罪の取り締まりをさせました。
落書きと汚いイメージがつきものだったNY地下鉄をきれいにし、
安全・安心な街づくりをした結果、犯罪を激減させることに成功したのでした。
つまり、前述の警察庁関係者は、
振り込め詐欺も万引きなど軽微な犯罪を放置せずに、抑止や再犯防止などのきめ細かい対策を講じ、
日本社会のモラルを立て直せば、減少する可能性が高いのでは、と言っているわけです。
私たちがことし1年をかけてキャンペーン展開する、
「ACTION 日本を動かすプロジェクト」。
こうした被害者対策、被疑者対策それぞれの有効な手立てをいかにして提案し、
振り込め詐欺などの悪質詐欺をゼロに近づけていかれるか。
私たちの挑戦は今、始まったばかりです。
ご期待ください。そして、皆さんのご意見、ご感想をお寄せください。
下川美奈


