子どもの自殺予防 とにかく話を聴いてあげて(第2回)

March 6, 2009 10:26 AM

 三重県で、私立高校に通う16歳の男子生徒が3月3日に自殺していたことが明らかになりました。
遺書に、「暴言や暴力」といった言葉があったといい、いじめを苦にして悩みぬいて、死を選んだとすれば、どんなにつらかったか、胸が締め付けられる思いがします。
 ネット上の暴言など含めいじめはますます陰湿になり、大人の目に見えにくい形になっているといいます。
周りの子どもたちも、そして被害者本人も、大人に相談するのをためらい、学校の教員や保護者が気付くのは簡単ではない現実があります。
いじめについては、別の機会に書きますので、今回は、子どもの自殺について、かなり長くなりますが、まとめてみます。

今年の1月19日、文部科学省は、学校の教員向けに「子どもの自殺防止マニュアル」をまとめ、今月下旬には各学校に配布します。(文部科学省のHPでも公開予定)
精神科医や自殺予防の授業に取り組む教員らが中身を練り上げたもので、教員(ひいては親含む大人)や同級生が、自殺しそうな子どもがいた場合、どう対応するとよいのか、また、不幸にして子どもが自殺した場合の対応も詳しく書かれています。
このマニュアルをまとめる会議の中で医師らが強調し、最終的にマニュアルにも盛り込まれたポイントは以下です。

■自殺の原因は複合的■
 いじめが唯一の理由である場合には、学校などで事実関係を調べる必要があるが、
 実は、子どもの自殺の理由は多岐にわたっていて、多くは、様々な悩みが複合的に重なった結果である。
 (警察省が遺書などに書かれた内容を集計した結果、2007年度、未成年の自殺者548人の原因・動機は(自殺者一人に3つまで理由計上) 
 精神疾患・うつ病の悩み138人、進路・成績の悩み91人、男女問題の悩み54人、いじめ・学友との不和35人、家族の不和28人)

■簡単にはいかないが、自殺は予防できる■
  突然の自殺に見えても、実は、子どもは救いを求めて、声をあげていることが多い。
 周囲がそれに気づいて、信頼の絆を回復することこそが自殺予防につながる。
 危険なサインを見つけたら、とにかく寄り添って話をきく。「励ます」「叱る」は厳禁。
  
 精神科の医師によると、「最後の一本の藁」という言葉があるそうです。砂漠を歩くらくだに次々と重い荷物を負わせ、まだ大丈夫だろうと、最後に一本の藁を乗せたところ、らくだの背骨が折れてしまった。負荷に耐える力が限界に達している場合、藁一本でも、命とりになる・・・というたとえです。
 たとえば、両親が不仲で、友達と喧嘩した上に、成績悪化、その上、転居したなど重荷が重なり、相談する相手もいない場合、誰かのちょっとした一言や、傍目には小さく見える失敗でも自殺にいたる危険があるというのです。
 よって、子どもの自殺(大人も同じかもしれませんが)を防ぐには、悩みが重なる、深くなる前に、保護者や教員などが子どもの変化に気づいて、何が不安なのか理由を探っていき、具体的に軽減策(転居を延期する、夫婦喧嘩をやめる)をとるのが、初期段階での対応です。
 自殺に至る前に、子どもが見せる変化(=救いを求めて出す「叫び」)とは、文章や絵に「死」について書く、小さい子どもなら画鋲を飲む、道路に飛び出すなど危ない行為や怪我を繰り返す、手首を切るなど自傷行為をする、服装や性行動が急に過激になる、・・・などだそうです。
 自殺したお子さんの保護者の方が「どうして事前に察知して止められなかったのか」と悩まれる例もあるといいますし、こういった「サイン」を見つけるのは難しいかもしれませんが、自分の子どもの表情の変化などを日ごろからよく見守る姿勢が、忙しい現代こそ必要ということですね。

次に、こういった「自殺に至るサイン」を見つけたり、「死にたい」と打ち明けられたら、大人はどうすればいいのでしょうか? 
とにかく、寄り添って、大切していることを伝える。(言葉で表す、ただぎゅっと抱きしめてもよい)
そして、子どもの絶望的な気持ち、死にたい気持ちをひたすら聴くことだそうです。
「死ぬなんて馬鹿なこと考えるな」とか「頑張れば元気になる」など励ましたり、叱ったり、説得しようとせず、寄り添って、話をきくことが大切。
そして、子どもが精神的に追い詰められている場合、学校のカウンセラーや精神科医の助言を仰ぐことが必要だといいます。
 それから、これを読んでいる若い皆さん、もし友達から「死にたい」と打ちあけられたら、話をそらしたり、冗談と受け止めず、とにかく聴いてあげてください。人に話すことですっきりすることもあるしね。
そして、「秘密にしてね」という言葉があったとしても、友達の深刻な変化について、信頼できる大人に必ず相談してください。友達の深い悩みをあなた一人で抱え込んでも、なかなか解決できないし、もし、その友達が自殺してしまったら、その友達も、恐らく一生苦しむであろうあなたも、ともに不幸になってしまうから。 

 1月、この「自殺防止マニュアル」をニュースZEROで放送した際、10代の時、自殺未遂をした経験から、自殺予防の小説をネットで公開するなどの活動している作家の中園直樹さんに話をききました。
 中園さんも、「自殺願望を察知したら、大人はとにかくありったけの愛情を注ぐこと。」と言います。
そして、「まずは子どもの信頼を得ないといけないのだから、余計なことは一切言わず、ただ話を聴いてあげる。自分に何ができるかなどと思わず、とにかく信頼を勝ち得ることをめざしてほしい。
信頼してくれないと、子どもは’ありがとう’とその場では言っても、’でも、僕は死ぬよ’となってしまう。自分にできることはないかもしれないけど、支えくらいにはなれるかもしれない、と言われたら、何となくこの大人に話してもいいかなと思う。
救うというと完全に上から見ている言葉なので、’支えになりたいと思ってる’というと響くと思う。」ということでした。

 第一回のブログでも、不登校の背景には、孤独に陥りやすい現代社会があると書きましたが、自殺に至る場合も、深い孤独感があるといいます。
結局、子どもも大人も、いかに家庭や学校で「一人じゃないよ」と伝えあい、「大切にされている」と実感できるか、なのですね。 子どもとしっかり向きあえているかというと・・・慌しい毎日を反省するばかりです。

庭野めぐみ

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