小学校3年から高校卒業まで10年、大阪で育ったので、今でも共通語のアクセントに自信がない。
朗読番組の準備は、漢字の読み方に加え、いくつもの言葉のアクセントを確認するところから始まる。
それでも最近は、「多分こうだろうな」という自分の感覚が、ほぼ当たるようになってきた。
気をつけなくてはいけないのは、小中学校時代にしか使わないような言葉。
書いて計算する「筆算」を、私は「ひ\っさん」と思い込んでいて、
40代になってから、同僚とお喋りしていて妙な顔をされ、「ひ/っさん」だったのか、と初めて知った。
植物や動物の名前のアクセントも、あやしいことがある。
新人の頃、春先に近所で木瓜の花を見つけて、天気予報で、「ボ/ケの花が咲きだしました」と言ったら、放送直後にスタジオの電話が鳴った。
「今、何て言ったの!?」美しいソプラノは、大先輩の女性アナ。「花は、ボ\ケですよ!」木瓜は「ボ\ケ」、私は「ボ/ケ(惚け)」。
先日、林芙美子の小説「晩菊」を、ラジオ日本「わたしの図書室」で朗読した。
収録後、「井田さん、いくつか、録り直しがあります」とスタッフ。漢字の読み間違いかな?と思ったら、全部アクセントであった。
「カナカナ」(セミ)を、私は「カ\ナカナ」と読んでいた。正しくは「カ/ナカナ」。
表題の「晩菊」は、事前に調べて「ば/んぎく」と知っていたけれど、
これも実は「ば\んぎく」と思い込んでいたのだ。
ほかにも(動植物名ではないけれど)、「太股(ふともも)」「辟易(へきえき)」のアクセントを間違えていた…。
アクセントに悪戦苦闘、というのはアナウンサーがよく言う駄洒落だが、
仕事を始めて40年以上経つというのに、この体たらく。ボケの私の闘いは、まだまだ続く。