8月30日 ラグビーボール

あれからもう4年たったのか、と思う。

2019年のラグビーワールドカップで、日本代表はベスト8入りという、目覚ましい活躍を見せた。

大会の後、応援してくれた人たちへの感謝を込めて、代表チームのメンバーが、日本テレビの番組に長時間出演した日、局内を移動中の数人の選手と、私はエレベーター前で遭遇した。

 

仕事を終え、エレベーターで1階へ移動した私。扉が開き、降りようとしたら、がっしりとした体格の紳士が4人、前に立っている。静かにたたずんでいるだけなのに、隙がなく、どこから降りたらいいのかわからない。私の戸惑いに気づくと、彼らは「あッ」という表情になり、すうっと二手に分かれて、どうぞ、とエスコートするように優しく導いてくれた。

降りてから、今度は私が「あッ」と振り向いて、エレベーターに乗り込んだ偉丈夫たちに、「このたびはおめでとうございます」とお祝いを述べた。閉まりかけたドアの向こうから会釈してくれた堀江選手の、はにかんだような笑顔が忘れられない。

それにしても、ラグビー選手が数人いると、無意識に陣形を整えて、相手を通さないような壁をつくるものなんだなぁ、と何だか可笑しかった。

 

高校時代、男女別の体育の時間に「女子にもラグビーをやらせてください!」と教師に頼み込んで、ままごとのようなスクラムを組ませてもらったことがある。女の子同士でも、ガシッと首と肩に来るあの感覚は、今も覚えている。

バウンドすると、どこにいくのか見当のつかない、ラグビーボール。

「インタビューは、相手とのキャッチボール。それも、どう転がっていくかわからない、ラグビーボールのやり取りのようなものだ」

と、アナウンス研修で先輩から教わり、後輩に教えてきた。私自身はラグビーボールに殆ど触ったこともないというのに…。

一流選手には、あのボールの軌道は、どこまで読めるのだろうか。

 

私のようなぼんやりした観客にとっては、「もう4年たったのか」だが、選手には、一日一日が、苦しい積み重ねの年月だったことだろう。

今回はフランスで開催される、ラグビーワールドカップ。強豪に囲まれて、日本は厳しい戦いになりそうだというが、ラグビーボール同様、どんな展開が待っているか、わからない。