10月28日 アナウンサーは、沈黙が怖い。

座談の司会やインタビューの途中で話が途切れると、
「何か言わなくては」「つながなくては」という思いに駆られる。
 
「相手をしらけさせてはいけない」「視聴者に飽きられてはならない」という、
アナウンサーの本能というか、習性のなせるわざ。
しかし、あわてて発するひと言は、たいてい不出来で、その場を救うというわけにはいかない。
それを補おうとして、ますます焦る。言うことが、どんどん薄っぺらになっていく...。
 
話すことが見つからなければ、黙っていればいいのである。
 
沈黙は、必ずしも無意味なひとときではない。
絵ならば余白。
「余白の美」という言葉もある。
気心知れた仲間と黙って過ごす時間の心地良さ。
激論の緊張感は、にらみ合いの「間(ま)」があればこそ。
それほどドラマチックではなくとも、戸惑い、考え込み、揺れ動く、出演者の心理...それを映すのも情報。
テレビは、映像も語り手なのだ。
 
自分の困った顔が映し出されるのも一興、
というくらいの気持ちでゆったりと周囲を眺めれば、「次のひと言」は、いずれ、浮かんでくる。
よかれと思って、むやみに筆を振り回し、大事な「余白」を塗りつぶしてしまっては、何にもならない。
 
分かっては、いるのだけれど...。