10月2日 ついこの間まで、新人だったのである。

朝、出社すると
アナウンス部の湯沸かしポットに水を満たして電源を入れ、
新聞各紙を紐でとじ(ひも、というのが古いが...)、
全員のスケジュールを記した大きなホワイトボードの日付を改め、
先輩諸氏の朝勤、夜勤、出張、休みなどを示す記号のマグネットを
当日のものに付け替える。


発声練習やアナウンス研修の合間は、電話にいち早く出られるよう、
受話器の傍で番犬のように身構えていた。
深夜、自宅にかかってきた友人からの電話に、
寝ぼけて「はい、アナウンス部です!」と答え、大笑いされたこともある。


デビュー後まもなく、
ニュースで「航海」のアクセントを間違えて、「コウカイ(後悔)してるか?!」と、
メインキャスターをつとめていた先輩から叱られたり、
急ぎの仕事でアナウンス部に駆け込んできて、
「廊下は走るな!!」と、部次長に怒鳴られたり...
(小学校のようなこの注意には、しかし、きちんとした理由がある。
走ってきて急に止まると、息が切れて、思うように話せない。
放送時間が迫っているときこそ、ゆったり歩いてスタジオに入り、
いつも通りの発声が出来るようにするのがアナウンサーのつとめ。
映る1秒前に放送席に着けばいいのだから、という次第。)


元気だけが取り柄の22歳だった。


時は流れ、テレビを取り巻く環境も変わったが、私は今もアナウンサー。
親子以上に年の離れた後輩と、アクセント辞典を引きつつ、ともに仕事をしている。
先輩方は定年で卒業、あるいは他部署で活躍。
気がつけば、日本テレビアナウンス部で一番の古手。


"少女老い易くアナウンス成り難し"か。
未熟をぼやきつつ、昔話をぽつりぽつり...。


写真は、先日の日光での勉強会で、新人アナの岩本さんと一枚。