9月21日  月見団子の謎

今年の中秋の名月は、9月24日。
毎年、十五夜お月さんにススキくらいは供えようと思いながら、
ただ月を眺めるだけの宵を過ごしてしまっている。お団子も久しく食べていない。
子供の頃、月見団子は祖母や母の手作りだった。まん丸に15個作り、三方に載せて、
お月さまから見えそうな、二階の窓辺にお供えした。
翌朝、少し固くなったお団子を焼いて、砂糖醤油をつけて食べる。
香ばしくておいしかった。
 

 

小学3年生の時、東京から大阪の枚方に引っ越して、驚いた。
十五夜の日、和菓子屋さんの店頭に並んでいるお団子が、丸くないのだ。
雨だれのように、一方がとがって細長く、しかも、くるりとあんこが巻いてある。
これが関西の月見団子...?
母は当惑顔で、その年も丸い団子を作り、中秋の名月のお供えにしたが、
ためしに買って食べてみると、細長いお団子も甘くておいしかった。
 

 

ずーっと不思議に思いながら、大人になって、テレビ局に就職した。
アナウンサーも、番組の企画を出すことができる。たいていはボツとなるが、
入社6年目の1985年、「てれびムック」という番組に、「月見団子の謎」というタイトルで、
東西の形が違う理由を突き止めたい、と提案したら、採用された。
スタッフの一員として制作会議の始めから参加し、リポーターもつとめた。
 

 

日常的なこと、身近なことほど、手がかりとなる資料が少ない。
「守貞漫稿(もりさだまんこう)」など昔の文献を調べたり、
京都の旧家で月見の掛け軸を見せてもらったりしたが、全容解明、鮮やかな謎解き!には、
なかなか至らなかった。
ただ、細長いお団子は、里芋をかたどったもの、と分かった。月を愛でつつ、
秋の収穫に感謝する十五夜。里芋を供えているうち、それをかたどって
甘い団子が作られるようになったらしい。関東の丸い団子は月をかたどったものだが、
中国から伝わった仲秋節の月餅の影響もあるようだ。
 

 

さらに、四国・愛媛の伊予郡では、団子と里芋を一緒に煮込んだ鍋を、
「団子じゃと思ったら芋じゃった、芋じゃと思ったら団子じゃった」
と言いながら食べると聞き、このシーンで、番組を締めくくった。
企画提出から3ヶ月。撮影最終日、大鍋を囲んだ伊予の人々の朗らかな声を聞きながら、
20代だった私は、番組をつくる難しさと面白さをかみしめていた。