寝過ごして、番組を"とばした"夢を見たことがある。
私は、東京・四谷の土手から生中継をすることになっているのだが、
起きて、時計を見ると、もう番組開始時刻!
大変だ、と駆け出していくと、いつものフロマネ(放送現場の進行係)の山ちゃんが、
困ったような笑顔で、向こうからやってきて、
「井田さん、どうしたんですか?もう中継、終わりましたよ」
...どうしよう!と、血の気が引いたところで、本当に目が覚める。
実際にはこんな経験はないのだが、妙に生々しく、寝覚めが悪い。
話す内容が全くわからないまま、ステージに出て行く、という夢もある。
私は試写会の司会役、という設定なのだが、
何の映画かも知らず、進行台本もない。手元のメモを見ても、真っ白。
それなのに、もう幕が上がり、舞台の袖でスタッフが、
「お願いします」と私の背中を押す。
出ていこうにも、足がもつれて...というあたりで、目が覚める。
生放送、人前に出る、というアナウンサーの仕事。
鈍感な私にも、ストレスはあるんだなァ、と思う。
現実の仕事で小さなNGはしょっちゅうだが、夢の中でもNO GOOD!
しかも、取りかえしのつかない大失敗ばかり...。
長年、人気番組を手がけているプロデューサーが、
「僕は、"入れ子状態"の夢を見る」と言っていた。
仕事の打ち合わせをしているのだけれど、「これは夢だ」とわかっている。
目覚めて、現実に打ち合わせを始めたら...実はまだ夢の中。
さらに目覚めると、これがまた...という具合で、
「どこで本当に起きたらいいのか、わからなくなるんだよ」
冗談めかして笑っていたが、こうなるとまるで、ホラー映画の世界...。
番組制作者のストレスは、出演者よりもさらに強く、複雑なのかも知れない。