7月2日 タチアオイ

梅雨の蒸し暑さを、しばし忘れさせてくれる、色鮮やかなタチアオイの花。
 

  
「下から順々に花が咲いていくでしょ。一番上まで咲くと、梅雨明けの季節だよ」
と、今TBSでお天気解説をしている、森田正光さんが教えてくれた。
 
四半世紀も前のこと。
当時、森田さんが所属していた日本気象協会の建物に、日本テレビの小さな特設スタジオがあり、
手書きの天気図にマグネットの天気記号を張って、私は週に3日、天気予報を伝えていた。
 
タチアオイの花咲く頃は、新人アナウンサー研修の季節。
 
まず、「伝える」心構えを土台に、
腹式呼吸、発声・発音、原稿読み、リポート、実況、インタビュー等々、
アナウンサーの仕事に必要なつぼみを、ひとつひとつ花開かせようとする。
 
講師の現役アナウンサーも、教わる新人も一生懸命。
しかし、なかなか、タチアオイのように順調には咲いていかない。
はるか昔の自分自身の新人研修を振り返っても、吊り橋状の螺旋階段でも上っているように、
手探り、足探りで、前に進んでいるのかいないのか、さっぱりわからなかった。
 
ちょっと前に生放送を終えたばかりなのに、疲れも見せず、涼しい顔で講師を務める先輩アナを見つめながら、
私のデビューの日なんて、永遠に来ないのではないかしら、と思ったこともあった。
 
そんな不安ともどかしさのまっただ中で、少しずつ、アナウンサーとしての根が張り、つぼみが膨らんでいく。
 
今年も、3本の"タチアオイ"が奮闘中。

それぞれに自分の色を見つけて、何とか、上まで、ささやかな花が咲く頃には、梅雨も明け、
まばゆい夏の太陽が、彼らの初仕事を照らしてくれることだろう。