2月20日 敬語なんか怖くない

今年の歌会始。最年少、12歳の少年の詠んだ歌に、うなずいたり、微笑んだりした人も多いと思う。


「文法の 尊敬丁寧謙譲語 僕にはみんな同じに見える」
たしかに、敬語はむずかしい。
でも、安心して。区別がつかなくて困っているのは、君だけじゃないから。

「○○さん(職場の先輩)が頂いたお菓子です」と、新人が職場をまわって配る。
「おい、今、なんて言った?」と先輩。新人クンはキョトンとしている...これは数年前、アナウンス部で実際にあった話。
「頂く」は「もらう」の謙譲語。部内で先輩のことを話すなら尊敬語をつかうべきである。
「もらう」の尊敬語は「もらわれる」、または、「おもらいになる」。
しかし、「先輩がもらわれたお菓子」では、受身形とまぎらわしい感じもあり、
「おもらいになったお菓子」はちょっぴり仰々しく、耳慣れない。
最近は「いただく」を丁寧語と思っている人もいる。新人がまごつくのも仕方ないか...。


こういうときは「○○さんがもらったお菓子です」で構わない。
ひとひねりして尊敬語を使わずにすませる手もある。
「○○さんのところに届いたお菓子です」とか、「○○さんから、おすそ分けです」とか。
しかし、これができる人なら、尊敬・謙譲で迷うこともなさそうだ。


公共交通機関の表示やアナウンスの中にも、尊敬・謙譲の区別がついていないものがある。
「ご乗車できません」「ご利用できます」
「ご(お)~~する」は、謙譲語の形。たとえば「ご説明する」のように、目上に対する自分の行為。その可能形ならば「ご説明できます」だが、相手の行為には、尊敬語の形「ご(お)~~になる」を用いて「ご乗車になれません」「ご利用になれます」というべきである。誤った用法のアナウンスを聞かされて通学する若者が気の毒だ。
この場合も、尊敬語や謙譲語を使わずにすませてはどうか?
方法は簡単。「ご」を取るだけ。
「乗車できません」「利用できます」
丁寧語の「です、ます」は使われている。一般の社会生活は、これで充分と思う。


敬語という、言葉の正装は、できるところから少しずつ、身にまとえばいい。
気持ちがこもっていれば、文法は二の次、と大人もおおらかに受けとめてほしい。
「尊敬丁寧謙譲語」を気にして対話が滞るより、少々間違っていても、話がはずんだ方が楽しいではないか。