2月28日 全員集合!

「『全員』を『ぜ/んい\ん』というアナウンサーがいて、気になるんだけど…」

と、久々に会った友人から言われた。

「ごもっとも。私も、気になる」

「直すよう、指導しないの?」

「している。私だけじゃなく、ベテランアナは皆、その都度、指摘していると思う」

「直らないの?」

「癖がついてしまっていると、またひょいと出てくることもある、みたい」

「ふうん…」

発音のプロでしょ、と言いたげな表情の友人は、納得していない。それはそうだ。私だって、納得なんかしていない。指導力不足を恥じるばかりである。

 

放送のアクセントは、意味が正しく伝わることが何より大切である。

「全員」を「ぜ/んい\ん」と言っても、違う言葉だと誤解されることはない。

アクセント辞典に載っていないから間違い、というものでもない。

しかし、「全員」は、昔の版から最新版に至るまで、「ぜ/んいん」という平板アクセントでいささかも揺るがない。

アナウンサーならば異論はなく、それこそ全員一致で、平板アクセントを支持するだろう。

「船員」「団員」「会員」…全て「〇/〇いん」である。

「公務員「学芸員」「研究員」など、長く、つまり複合名詞になってくると、「いん」の前で下がる。しかし、「〇〇〇い\ん」と、「ん」の前で下がる言葉は、複合名詞にもない。

「全員」は、やはり「ぜ/んいん」と発音すべきなのである。

 

独特の、不思議なアクセント間違い…どこかの学校の、影響力ある体育の先生が

「ぜ/んい\ん、前へ、進め!」

とでも号令をかけて、同僚の先生や、生徒達に広まったのかしら?などと想像してみる。

ある時「これかな?」と思ったのは「あの人は善人だから」という言葉を聞いたとき。

「善人」は「ぜ/んに\ん・ぜ/んにん」と両方のアクセントがある。

連想で出てきたのだが、「仙人」は「せ/んに\ん」のみである。

「善人」や「仙人」に引っ張られているのかも…と、これは今のところの私の仮説。

 

ともかく、「全員」は「ぜ/んいん」である。

徹底しなくては。アナウンサー、全員集合!