1月21日 和尚さんにならって

村人が、庄屋さんの家に招かれ、ご馳走されることになった。
改まった食事の作法が分からないので、困って、寺の和尚さんに相談に行くと、
「すべて、わしのする通りにすればよい」と和尚さん。
当日、箱膳を前にずらり並んだ、和尚さんと村人たち。
まず、芋を箸でつまんだ和尚さんが、うっかり、芋を落としてしまった。
横目で見ていた村人たちは、次から次に、芋をつまんで落とした...。 


という民話を、子供の頃に聞いたことがある。
滑稽でほほえましい話だが、言葉もこのようにして、
不思議な言い回しが伝承されていくような気がする。
"和尚さん"は、職場の先輩である場合が多い。


飲食店で、注文した直後に店員が、
「オムライスとコーヒー、ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
運んできて、
「こちらがオムライスになります」「こちらコーヒーになります」
支払いの際、
「一万円からお預かりします」
違和感を覚える人は多いと思うが、若い店員をにらんでみても、仕方がない。
彼らの先輩の先輩の、そのまた先輩あたりから引き継がれているマニュアル敬語なのだから。


中でも「〇〇になります」は、どんどん広まっている。
会議で、「こちらが本日の資料になります」
作成中ならまだしも、出来上がっているのだから「資料です」で充分なのだが、
もう一段の丁寧さを求めて、つい言ってしまうのであろう。
それならば「資料でございます」と言えばいいのだが、今どきの若者は「ございます」に慣れていない。普段、「おはようございます」を「ザーっす」なんて言っているから...。


こういうものだと思い込んできたけれど、本当にこの言い回しでいいのかな?
と、一度、若い人同士で話し合ってみてほしい。
前例をなぞるのではなく、自分で納得して話せば、仕事の言葉も、いきいきと心地よいものになるはずだ。



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