11月14日 ご主人、奥さん

私の高校時代の恩師は、同じく教員である夫人のことを話すとき、
「連れ合いさん」
と言う。
「僕はこう思うのやけど、連れ合いさんは賛成してくれへんねん」
照れ笑いしながらの関西弁は、柔らかな雰囲気で温かく響く。


自分の配偶者を何と言うかは、人それぞれである。
妻を指す場合は「家内」、「女房」、「妻」、「かみさん」、
最近は関西の芸人さんの影響か、「ヨメ」という人も増えている。
妻の側からの言い方は「主人」、「夫」、「旦那」、ぐらいであろうか。
「亭主」や「うちの宿六」などは、ほとんど聞かれなくなった。
何と呼ぼうと、これはもちろん個人の自由。


では、インタビューで、相手の配偶者をどう呼べばいいか。私はいつも迷う。
「ご主人は~」「奥さん(または、奥様)は~」と質問しながら、
「これでいいんだろうか?」と、心の中で首をかしげている。
人によっては、あるいはテレビの視聴者の中にも、
「『ご主人』? 妻は夫の家来じゃないわよ」とか、
「外に出かけてばかりなのに『奥さん』か?」とか、
釈然としない人がいるのではないだろうか。


しかし、これ以外の呼称がなかなか見つからない。
「私の妻は」と言う人に対しても「あなたの妻は」とは言えないし、
初対面で「○○夫さん、○○子さん」などと、名前を呼ぶのは馴れ馴れしい。
「お連れ合い」も、良い言葉だと思うのだけれど、いまひとつ定着しない。
「連れ合いさん」と話す高校の恩師に対しても、つい「先生の奥様は~」と言ってしまう。


しかし、これは「やる気」と「慣れ」の問題かも知れない。
「お母さん」という、今では標準的な母親の呼び方も、
明治時代の教科書に採用されて広まった、比較的新しい言葉だという。
男女平等、そしてカップルのありようもさまざまな現代、
すんなり耳に入る呼称を、アナウンサーを含め、言葉に携わる人間が、
もっと工夫し、提案すべきなのではないだろうか。

茶碗の"連れ合いさん"