行きつけの、といいながら、1年以上、足を運んでいなかった小さなレストランに、
一人で夕飯を食べに行った。
「あ、お久しぶりです。良かった、元気そうで」
イタリアで修業したシェフが、人なつこい笑顔で迎えてくれる。
開店から10年を超える店だが、去年はどうなることかと思ったという。
持ちこたえてくれて、こちらも嬉しい。
間隔をとったカウンター席で、久々にシェフのトマト料理を味わった。
帰りがけ、
「体に気をつけてくださいね。僕は、ちっちゃい頃からテレビで見てるんですから」
そろそろ中年といってもいいシェフにそう言われると、「?!」と思うが、
数えてみれば40年以上、アナウンサーとして仕事をしている。
40年前は、確かにこのシェフも「ちっちゃい」子だったことだろう。
3年後輩のアナウンサーが、
「新入社員に、『母がファンでした』と言われちゃったのー」
と笑いころげていたのは、もう数年前のことになる。
さまざまなことがありながら、時の流れは速い。
定年後も仕事を続けられている幸運に感謝しつつ、
「祖母がファンでした」
と誰かに言ってもらえる日を夢みて、もう少し頑張ろうかな、と思う。
春、また新しい仕事仲間を迎える季節である。