3月20日 心の鍛え方

平昌オリンピック・パラリンピック。
日本代表選手の堂々たる戦いぶりに、
「今時の若者は、緊張やプレッシャーとは無縁なのだろうか」
と驚嘆した人もいるかも知れないが、そんなことはない、と思う。
オリンピックのような大きな舞台に立ったことがないので、想像するばかりだが、
息がつまりそうなほどの重圧と緊張なのではなかろうか。


情報番組などで連日、スピードスケートの世界をわかりやすく説き明かしてくれた、
1998年長野オリンピックの金メダリスト、清水宏保さん。
清水選手が金メダルを獲得した日、夜のニュース番組を担当していた私は、
「大変な重圧を、どうして清水さんは克服することが出来たのですか?」
と尋ねた。
清水選手は誠実な口調で、
「緊張とプレッシャーは絶えず感じているんですけれども、ある時ふと
『あ、今、自分は緊張から解放されている』と気づく瞬間があるんです。
その一瞬の感覚を体に覚えさせて、そういう時間を少しずつ増やしていこう、と心がけました」
鍛え上げた体に、磨き抜いた心を宿して世界の頂に立った23歳の若者は、
遠くを見つめるようなまなざしで、にっこりと微笑んだ。


人の命をあずかり、人の体にメスを入れる、外科医。
ある高名な医師に、
「難しい手術に臨むとき、必要なこと、心がけていることは何ですか?」
と聞いてみた。
「自分が"いい顔"してること」
即答だった。
「(手術用の)手袋をはめて、鏡を見て、晴れやかな顔をしているかどうか確かめる。
患者のために、自分とクルー(手術スタッフ)が最大限の力を発揮するためには、
リーダーである自分が、ゆとりのある、いい顔をしていることが必須です」
まなじりを決して、気負い込んでいる人よりも、微笑みをたたえている人の方が強い...。


名人の振る舞いには及びもつかないが、自分なりの大舞台に向き合うことがあったら、
かみしめたいと思う、道を究めた二人の言葉である。