7月29日 五十五周年

ラジオ日本で「わたしの図書室」という朗読番組を担当している。
そのご縁で、一昨年の秋、ラジオ日本の開局55周年記念番組の進行役をつとめた。
作家、五木寛之さんのお話と音楽で綴る2時間の特番。
五木さんは、実は開局当時のラジオ日本(当時はラジオ関東)で構成作家として活躍。
また、作詞を手がけた「青年は荒野をめざす」「愛の水中花」など、ヒット曲も数多く生み出している。
 
「五」で始まるお名前も、55周年に花を添えていただくにふさわしい、とスタッフは考えたようだ。
五十五だから、もうひとり、「五」のつくビッグな方を、とゲストは五木ひろしさん。
五木寛之さんは、五木ひろしさんの名付け親でもあり、
素晴らしい顔ぶれの番組となったのだが、ハタと困ったのは、進行役の私。
 
「イツキヒロユキさん」と「イツキヒロシさん」の、ラジオでの対談...!
「五木さん」という呼びかけでは、私がどちらに話しかけているのか、聴取者(リスナー)には分からない。
テレビのように画面を切り替えて、話し手を映すことも出来ない。
いちいちフルネームを言うのも、まだるいし、
大御所を「ヒロユキさん」「ヒロシさん」とは呼べないし、
「作家としては~」「歌手としては~」と分類するような尋ね方も、ちょっと...。
 
こういう場合、どうしたらいいんだろう?
 
ラジオの司会は初めての私。困っているうちに、本番の日が来た。
ゲストコーナーが始まる。
「歌手の五木ひろしさんです」と私が紹介すると、
「どうも、先生、ご無沙汰しております」と、五木ひろしさんの澄んだ明るい声。
「しばらくでした。お元気そうで」と、渋く、深みのある声は、五木寛之さん。
「あなたと会うのは久しぶりだけど、テレビで、しょっちゅう見てますよ」
「また、先生はよく歌番組をチェックしていらっしゃるんだ(笑)」
 
旧知のお二人の対談は弾んで、次々と話に花が咲く。
歌をちりばめた40分間の対談中、
私は3回ほど、フルネームでお二人に呼びかけたが、進行役は、ほとんど不要。
リスナー気分で聴き惚れているうちに、ゲストコーナーは、楽しく、スムーズに終了した。