8月7日 山本美香さん

ジャーナリスト・山本美香さんには、深夜のニュース「きょうの出来事」時代に、
戦地から数多くの現場リポートをしていただいた。
アフガニスタン、イラク...戦場を駆けめぐりながら、微笑みを絶やさず、
紛争地域の女性や子供の状況を丹念に取材し、伝えてくれた。
彼女がシリアで凶弾に倒れたのは、2012年8月20日。今月、七回忌を迎える。

    
山本美香さんが亡くなった翌年、私はラジオで彼女の著書を朗読した。
「戦争を取材する」という、子供向けに書かれた本。
平易な言葉で、語りかけるような文章なのだが、声に出して読んでみると、
難しかった。


息継ぎの場所がなかなか見つからないのである。
優しいけれど、情熱のこもった、たたみかけるような語り口。

ああ、美香さんは理想を追い求め、走り続けた人なのだ、と実感した。

公私共にパートナーだった、ジャーナリストの佐藤和孝さんにそのことを話すと、
「そうだろうな、分かる気がする。美香は理想主義。
現実主義者の俺が、なだめたり、
回り道をすすめたりして、二人でやってきたんだよ」
現実の支えがなくては、道は切り開けない。でも、胸に抱いた理想を忘れないで、という美香さんの声が、どこからか、聞こえてくるような気がする。


6年前、最後となった取材で、山本美香さんは、一人の赤ちゃんにカメラを
向けていた。
「可愛い...」と、彼女が思わず顔をほころばせた、つぶらな瞳のシリアの幼子。
あの子は今、どうしているだろうか。