7月20日 なじめない言葉

「紐づける」

マイナンバーカードの問題で、国会審議やニュースでしばしば耳にするようになったが、雑な感じがして、私は、どうもなじめない。

手持ちの辞書には載っていない。IT業界でよく使われる言葉らしい。

紐で二つのものを結びつけるように、データをつなぐという意味なのだろうが、

それならば「結びつける」「つなぐ」「関連づける」などと言ったほうが、分かりやすいのではないか。

「他人の情報が紐づけられていて…」本当に紐で結び合わせるとしたら、他人の情報が記されたカードを、そう簡単につなげられるものではないと思う。

クリック1回の手軽さに潜む危うさが、「紐」という、昔ながらの響きで薄められているような気もして、

IT落ちこぼれ人間としては、何やら腹立たしく、釈然としないのである。

 

「前倒し、後ろ倒し」

「前倒し」は辞書にも載っていて、もはや一般用語なのだろうが、予算の執行や施策の実施を早める、という意味のお役所言葉である。

いつ頃から使われるようになったのかしらん?と思い、わが家の「広辞苑・第三版」(昭和58年発行)を開いてみたが、「前倒し」の項目は見当たらなかった。

「予定より早める」とか「繰り上げる」とか、素直な表現にすればいいのに、と思う。

最近は、逆の意味の、遅らせたり繰り下げたりすることを、「後ろ倒し」という人も出てきた。さらには「前倒し」の動詞化で、「前倒す」という人も…いやはや。

そもそも、なぜ「倒す」のか?乱暴ではないか!予算の執行や施策の実施は、心を配って、丁寧にしてほしい!…と、これは私の八つ当たり。

 

「受け止め」

「××の件について、受け止めをお願いします」と、記者が政治家にマイクを向けている。

いわゆる“ぶら下がり”インタビューで、時間もなく、相手に逃げられないように、という思いもあって、言葉を短くしているのだろうが、

「受け止め」という名詞は変な感じがする。

受け止める、は動詞である。受け取る→受け取り、のように名詞化する言葉もあるが、受け止める→受け止め、はまだ成立していないと思う。

「〇〇大臣の受け止めはどうだった?」「はい、これこれです」という、ニュースデスクと記者とのやり取り、

すなわち業界内の言葉遣いを、公の場に持ち出すのはいかがなものか。

 

ニュース番組を離れて久しく、今や、テレビを見て文句を言うばかりの私だが、

日々のニュースを担当していた頃、もっと言葉に鋭敏に反応し、強く提言してきたら、少しは現状も違っていたのかもしれない…と思うと、内心忸怩たるものがある。