6月21日 同い年

 

 

今年は、作家・遠藤周作の生誕100年。それにちなんで、3月にラジオで遠藤氏の小説を朗読した。「生きていたコリンヌ」という、パリを舞台にした、エスプリのきいた短編。声に出して読むのが楽しかった。

作家では、池波正太郎も生誕100年。つまり、二人は同い年、ということになるのだが、私のイメージでは、どうしても池波さんの方が年上、という感じがする。時代小説、ことに「剣客商売」の秋山小兵衛老人の描写が、たまらなく魅力的なせいだろうか。

 

100年前の1923年は、関東大震災の年。

ということは、映画監督・鈴木清順も生誕100年…というのは、かつて鈴木清順さんにお話を伺っていた時、少し大きな地震があり、「私はね、地震が怖いんですよ。震災の年の生まれですからね」と清順さんが、笑顔を見せながら、やや息を弾ませて、話していらしたことを思い出したからである。

遠藤周作、池波正太郎、鈴木清順のお三方では、何と言っても鈴木清順監督が、いちばん年長に思える。白髪とお鬚の印象が強いせいかしら…でも、皆さん同い年。

 

生誕114年。半端な数字であるが、1909年生まれの作家3人は、さらに衝撃的な同い年である。

中島敦

太宰治

松本清張

ラジオ日本「わたしの図書室」で、いずれも作品を朗読した著名作家だが、ある時、同年の生まれと知って、驚いた。

病のため33歳で逝った中島敦。短い人生ながら、おびただしい作品群。最近も、「わが西遊記」をもとにした芝居が上演された。時代を超えて、新鮮な光を放つ作家である。

太宰治の人気は、衰え知らず。ラジオで何作、朗読したことか…。7月には「おさん」を放送する。

その太宰が38歳で亡くなった2年後に、作家としてデビューしたのが、松本清張。

子供の頃、父の本棚にずらりと松本清張の文庫本が並んでいた。「点と線」に出てくる店は、数年前まで有楽町にあった。

このお三方となると、誰が年上というよりも、全く違う時代、違う世界を生きた人のような気がしてならない。

同い年。時代を共有する運命にありながら、実に多彩で、不思議な縁(えにし)だと思う。