2月2日 ナレーターの居場所

世界一周の旅番組でも、ナレーションの収録は、録音スタジオに閉じこもったままで完結する。
出不精な人間に向いている仕事かも知れない。
では、番組の中でナレーターは、どこに"いる"のか?
 
場面の状況を説明したり、
学術的な解説を加えたり、
視聴者が抱くであろう疑問を投げかけたり、
言葉のリズムで楽しさや情感を高めたり、
番組を締めくくったり...
さまざまな役割を担う、ナレーター。
番組を送り出す側にいる、作り手の一人だが、居場所は、ひとつではない。
 
たとえば「ZIP!」の「MOCO'S キッチン」
料理をする、速水もこみちさんの隣でアシスタントをつとめているかのように、
材料や手順を紹介しつつ、仕上がりに「もこみちさん、出来ばえはいかが?」と言うときは、にわかに反転。
もこみちさんと向き合い、いわば視聴者の一人となって、呼びかける。
 
BS日テレの「船越英一郎 京都の極み」
姿は見えなくとも、船越さんの同行者となって、
相づちを打ったり、古都の美に感嘆したり、町歩きの後からついて行ったり、時には先回りしたり...。
かと思えば、京都人か学者のように、名所案内や歴史解説を繰り広げる。
そして、京都から遠く離れた地で見ている視聴者と共に、映像を見ながら、「行ってみたい!」という心情も表現する。
 
「京の五条の橋の上」の牛若丸のごとく、ここと思えばまたあちら...。
ナレーターは、フットワークが勝負。
小さな録音スタジオの中で、変幻自在、八面六臂の活躍を目指して"走りまわって"いる。