アナウンサーの仕事は、楽器演奏に似ている。
ニュースやナレーションでは、原稿という“楽譜”を、自分の声という“楽器”を使って、ここが重要だな、という所を際立たせて、表現し、伝達する。
スポーツ実況やリポートには、書かれた楽譜はないが、経験と技術を活かして、アドリブ演奏の連続。「そう、その音だ!」と、聴き手の心を揺らす言葉を届けるためには、アナウンサーとしての音色、すなわち、語彙を豊かにする努力が欠かせない。
インタビューは、キャッチボールに例えられることも多いが、私の感覚では、ジャムセッション。どう展開していくか、自分にも相手にも読めない中で、メロディー(主題)に寄り添うようにハーモニーをつけたり、リズムを合わせたり、変えたり、時には、あえて不協和音を鳴らして、相手の本音を引き出そうと試みたり…。
台本通りの、いわゆる予定調和のインタビューは、つまらない。怖いけれど、一期一会のスリルを感じるセッションほど面白いものはない。
年末年始、日本テレビはスポーツ特番が目白押し。
高校サッカー、箱根駅伝…実況もリポートもナレーションもインタビューも盛り込まれた“壮大な交響楽”を、担当するアナウンサーは皆、張り切っている。
本番に臨む緊張と不安はもちろんあるが、それにまさる高揚感。スポーツが巻き起こす“風”を捉え、奏でる瞬間、生きていることを実感する。
駅伝もサッカーも、私自身は一視聴者の立場だが、後輩たちの歓喜の合奏を、楽しく、時にハラハラしたり、クスリと笑ったりしながら、年を越す。
皆様にとって、来年が良い年になりますように。