1月4日 目減りしない言葉

「あけましておめでとうございます」

これまで幾たび、口にしてきたことだろう...。
年の初めの、少し改まった気持ちと、ほのぼのとした明るさ。
暮れに交わされる「良いお年を」とともに、
年々歳々、しみじみと胸に響く。
語り継がれ、吟味され、料理ならば極上の出汁(だし)のような、ひと言。
何度繰り返しても、飽きることがない。


食べ物も、言葉も、現代に暮らす私たちは、新しもの好きである。
「この春の新作スイーツ」といった企画がメディアに溢れ、
時代を反映した、新語・流行語は、いつも関心の的。
しかし、刺激を求め、大げさな表現をしていくと、言葉の意味はやがて変質してしまう。
「潜入」、「密着」、「号泣」、「激怒」...日々、テレビから流れるこれらの言葉で、
もとの意味通りに使われているものが、どれだけあるだろうか。
予約して訪ねているのに「潜入」。涙をこぼしているだけの「号泣」。
「激怒」では物足りなくなったのか、「大激怒」という見出しもあった。
次々に言葉を使い捨てて、大激怒の先は、一体どうするの...?


お正月の「おめでとう」のように、つややかで、目減りしない言葉を聞くと、ほっとする。
今年は、長持ちする語彙を増やす年にしたい。