2月25日 本当にOK?

ナレーションの録音で、読み手の自分は、あまりうまくいかなかったと思っているのに、
「ハイ、OKです」とディレクターに言われた時、
「もう一回お願いします」と頼むか、そのまま仕事を終えるか。


「皆さん、どうしていますか?どうすべきだと思いますか?」
と、若手のフリーアナウンサーが問いかける。
月に一度、日テレイベンツのMAXキャスティングが主催する、フリーアナ交流会。
時に、声優さんや噺家さん、制作スタッフ経験のあるナレーターも参加し、
多彩な顔触れが仕事上の課題や悩みを語り合う。


新たなメンバーが加わると、必ずと言っていいほど出てくる、上記の問題の結論は、
「『OK』と言われたら、それでいいのだ!」
何やら天才バカボンのパパ風だが、ベテランたちの挙げる根拠としては、


・自分の主観的判断よりも、ディレクターの客観的判断の方が、ほとんどの場合、正しい。
・「もう一回!」と頼んで、数回やらせてもらっても、結局「テイク1」、すなわち最初の録音が一番良かったという場合が多い。回数を重ねると良くなる、というのは読み手の願望であり幻想。何回もつきあわされるスタッフが気の毒である。
・ナレーターのかたわら、制作スタッフもつとめた経験から言うと、「OK」は、そうやすやすと出さない。ナレーションは番組の印象を左右する大事な要素。スタッフの決定を信じよう。


画家にとって一番難しいのは、描いている作品をどの時点で完成とするか、すなわち、
いつ自分にOKを出すか、だという。「まだ描き足りない」と思って加えた部分が蛇足になり、
「ああ、この一歩手前で筆をおいておけば良かった」と思うこともあるらしい。
自己完結できる仕事は自由だが、孤独である。
その点、放送の仕事はチームワーク。自分で決められない歯がゆさ、もどかしさはあるけれど、よりよい決定に導かれる幸運を内包している。