8月5日 あわてると...

その昔、気象協会のKさんが職員食堂でうどんを食べていたら、同僚が呼びに来た。
「Kさん、もうすぐラジオの天気予報、本番だよ!」
「あ、忘れてた!」と、Kさん。
あわてて食堂を飛び出し、スタジオにすべり込んで、何とか生放送の気象解説を終え、
ふと左手を見たら...食べかけのうどんのドンブリを持ったままだったという。


別人だが、これも気象協会のKさん。
泊まり勤務で風呂に入っているときに、「Kさん、深夜ラジオの天気予報!」
(...本番を忘れて食事をしたり、風呂に入ったり、というのは、
アナウンサーには考えられないことなのだが、気象協会の人は、
予報の分析や、各局の天気担当アナへのレクチャーや、
天気資料の整理やまとめの合間に、時間の流動的なラジオで天気予報を伝えるということで、
こうしたポカミスも時折あったらしい)
ともあれKさん、取る物も取りあえず、風呂からスタジオまでの廊下を駆け抜け、どうにか間に合った。
放送後、気が付くと、"取る物も取りあえず"小脇に抱えていたのは、風呂場の脱衣かご。
走れメロス!とばかりに、はからずも職場でストリーキングをしてしまったという。
当時は男所帯だった気象協会ならではの、"武勇伝"。


別に、気象協会にそそっかしいKさんが集まったわけではない。
人間は、あわてると、こんなことをしでかす生き物なのである。


新人アナウンサーの頃、私は気象協会に通って、天気のことをいろいろと教えてもらった。
知性豊かで、自然を愛する、真面目な人ばかり...
ひょっとすると、真面目な人の方が、パニックに陥りやすいのかもしれない。
「そんなことをするわけがない」ということを、「するかもしれない」と考え、
対策を取ることが、"想定外"への備え。事故を減らす、第一歩。
2人のKさんのエピソードは、笑いと共に、大事なことも教えてくれる。


気象協会のスタジオ(1980年頃)