10月12日 ことしのキンモクセイ


 
秋を告げる、キンモクセイの香り。
今年も9月末、甘く爽やかな風が吹いてきて、オレンジ色の小さな花に目がとまった。
気がつけば、ハナミズキの葉先も紅く色づき始めている。
もっとも、今年はどういうわけか、夏の花、サルスベリがいつまでも元気にピンク色の花房を伸ばしていた。 
 

 
私が新人の頃、天気予報はアナウンサーに一生ついて回る仕事、といわれていた。
気象予報士という資格制度はまだなく、
天気予報を伝えるのは、気象協会の男性解説者か、女性アナウンサー、
一部、タレントの「お天気お姉さん」というテレビ局が多かったように思う。
 
私の初めての顔出し生放送も天気予報。
アナウンス部の大先輩に見守られて、
当時、大手町にあった気象協会の特設スタジオから、夕方の情報番組の中の1分間の天気コーナー。
「こんにちは!」
...何だか雲の上をふわりと歩いているような感じで、「ホントに映っているのかな?」と思った覚えがある。
 
以来、天気予報の出だしの、季節感を醸し出すコメントをひねり出すのに、四苦八苦。
町を歩きながら、街路樹のたたずまい、人々の服装、
青果店や鮮魚店の店先を見つめ、交わされる会話に耳を澄ます。
関東一都六県の観光協会に足を運んで「何か話題はありませんかねェ?」
動物園や植物園、果ては北海道の見知らぬ人に電話して、
「どんなときに春が来たとお感じになりますか?」なんて、"突撃取材"したこともあったっけ...。
  
気負って一生懸命追いかけては、季節感に逃げられるような感じの日々だった。
無理なく季節の話題をちりばめることができるようになったのは、
アナウンサーになって15年くらい経ってからである。