12月18日 カ・ン・ゲ・キ!

子どもの頃からあこがれていた、芝居の世界。
役者にはなれなかったが、芝居を見ることは、今も一番の趣味。
高校2年の時に見た、仲代達矢さん主演の俳優座「どん底」以来、40年余り。
伝統から前衛まで、幅広く楽しんできた。
 
パンフレットは積もり積もって、特大の引き出し4つ分。
先日、ついに1つの引き出しの底が、抜けてしまった。
写真は、自由劇場「上海バンスキング」、帝劇の「レ・ミゼラブル」、
こまつ座「頭痛肩こり樋口一葉」、いずれも初演のパンフレット。

芝居そのものはもちろん、
幕間のロビーのざわめきや、客席から見上げる装置や照明、すべてが面白い。
仕事が忙しかった一時期、久しぶりに入った劇場で、幕が上がった瞬間、
ときめき、しびれるような感覚が、体中を駆けめぐったのを覚えている。
追われるような日常には足りなかった"酸素"がここにある、と思った。
  
舞台で繰り広げられるのは、虚構の世界。
しかし、生身の人間が喋り、動き、観客が足を運んで見る、一期一会の現実。
出来不出来のばらつき、効率の悪さは、もどかしく、いとおしく、人生さながら。
時に、思いがけない輝きを放つ瞬間は、不意に訪れた恋のようなものかも知れない。
  
将来、暮らしのすべてがITで賄えるようになったとしても、
人間の匂いのする劇場に、私は通い続けることだろう。