6月1日 毎年覚えて毎年忘れる

「いずれアヤメかカキツバタ」

すっと背筋を伸ばしたような、紫や白の花が美しい季節である。

天気予報を担当していた若い頃、季節の話題をいつも探していた。

毎年初夏に紹介したのが、「サツキとツツジの違い」と「アヤメ、カキツバタ、ハナショウブの違い」という豆知識。

 

・サツキは「サツキツツジ」で、ツツジの一種。花は小さめ。葉(新芽)が花よりも先に出る。

・ツツジはサツキより早く咲き、花は大きめ。花が散ってから葉が出る。

 

・アヤメは「文目・綾目」、花びらに網目状の模様があり、草原に咲く。

・カキツバタは花びらに白い筋があり、池や沼など水の中に咲く。

・ハナショウブの花びらには黄色い筋。水辺に咲く、等々…。

 

パソコンなど身近にない時代。資料室の事典や、気象協会のベテランの著書から引用して、

絵入りのフリップを美術さんに描いてもらい、自分で書いた原稿を読み、説明した。

いわば手作りなのに、放送後はたちまち忘れ、

翌年の初夏になると、「何だったっけ?」と、また事典を開くところから始める…。

 

「アップダウンクイズ」という昔の人気番組を担当していた、

MBSの小池清アナウンサーは、毎週のクイズ司会の準備と本番の蓄積で、大変な博識になられたという。

現在放送中の、ある人気番組のナレーターは、毎回、歴史や芸術にまつわる蘊蓄を語りながら、録音が終わるときれいに忘れてしまう、という。

以前の放送と重複するような話を語ることになっても、新鮮な感覚で取り組める利点があるらしい。

なるほど、と思いつつ、私の場合はただの忘れっぽさ。紹介してきた事柄がちっとも身についていないのは情けない。

こうしてブログに書いても、来年になると、アヤメ、カキツバタ、ハナショウブ…違いの分からない女になっているに違いない。