6月15日 アナウンサーになって、十二支(えと)が三巡りした。

入社した次の日の帰り道。ずっしり重い荷物を背負ったような疲労感に、
「たった二日でこんなに疲れていて、私、やっていけるんだろうか?」
と、心細くなったのが、つい昨日のことのよう。
当時は、三年後の自分の姿も想像がつかなかった...。
  
新人研修もそこそこに、「本番が、いちばん勉強になる。人手不足だから、実地で学べ」と、
天気予報や朝のニュースに放り込まれて、以来三十余年、走り続けてきた。
十二支の一巡目、二巡目...なんて考える余裕もなかった。
もっとも、この数年は、走っているとは言い難い。
かつて担当していた番組の数、仕事量に比べれば、のんびり、ゆったり...できるはずなのに、
準備や資料整理のスピードが年々のろくなって、「大変だ、どうしよう!」と、いつもあせっている。
  
自分の番組のビデオや録音を見たり聞いたりすると、今も「ここ、違う!」と、反省点がいくつも。
安定感は増したが、勢いや新鮮さは、若手にかなわない。
ヘタでも体当たりの新人たちがまぶしい。
ただ、自分の失敗に以前ほど、いら立たなくなった。
パワーの衰えを補う、別の何かが、年齢と共に身に添ってくることも、感じられるようになった。
視野が広がり、他人に助けてもらうのが上手くなった...。
  
失われてゆくものと、得られるもの。
これからも、アナウンサーという仕事の"貯金"は、ゼロのまま、過ぎていくのだろう。
プラスになることを目指しつつも、結局、収支はとんとん。
情けないような、ありがたいような...。