12月11日 2匹の小ネズミ

思うに任せないことの多い世の中。
誰もが、善かれと思い、幸せを願って行動しているのに、
方法論がすれ違ったり、
難題を前に、足を止めてしまったり
自分の身を守るのに精一杯だったりして、
気がつけば、「こんなはずではなかった」という状況。
若い頃は、毎日のように怒っていたが、
今や、あきれはてて、ものを言う気にもならない。


ぼんやり、憮然としていたら、
30年も前に美術番組で取材したフランスの画家が教えてくれた、
こんな小話を思い出した。


<小ネズミが2匹、ミルクの入ったカップに落ちてしまった。
懸命にもがいて這い上ろうとするが、滑って上れない。2匹は絶望してしまう。
1匹は利口で、いくらあがいても出られないと悟り、動きを止めてブクブクと沈んでいった。
もう1匹は、何をしたらよいのか分からないが、とにかく何かをしようと決心した。
そうして足をバタバタさせているうちに...ネズミは困難を克服した!
かき回し続けたミルクが固まってバターとなり、ポンと外にとびだすことができたのだ。>


「僕にとって、人生の真実はこの小ネズミ以上のものではない。
ネズミのオプティミズムを信じて、これからも絵を描いていきますよ」
と、画家は微笑んだ。
ベルリンの壁が崩れる少し前。自由を求めて、人々が動き始めた時代だった。
しかし、世界は新たな秩序を構築できず、ヨーロッパも今、混乱と混沌の中にある...。


悲劇か喜劇か分からぬが、小ネズミ、いや、人間が織りなすこの世のドラマは続いていく。
あきらめないで、もう少し、あがいてみようか。