5月1日 あがらないためには

「ベテランになると、番組で緊張することなんかないでしょう?」
と言われることがあるが、答えは「いいえ」。
何年経っても、緊張はつきもの。
新人の頃とは、質や度合いは違うが、ドキドキしたり、
体がスムーズに動かなかったり、リハーサルではしなかったミスが出たり...。


「あがらないためには、どうすればいいですか?」
と聞かれることもしばしばあるが、こちらが教えてほしいくらいである。
人前で何かをするとき、あがらない人は、いないのではあるまいか。
それでも仕事柄、どういう時にひどくあがるのか、私なりの"数式"を見つけた。


「緊張」=「本番で見せたい自分」-「現実の自分」


こうありたいという理想と、これしか出来ないという現実の差が大きいほど、あがる。
この差をどう縮めるか。
現実の自分はすぐには上達しない。
本番で見せたい自分の理想を、高いところから引き寄せて、背伸びすれば届く、
くらいのところまで持ってくるしかない。
くやしいけれど、理想が高すぎて緊張し、日頃の力も出せないで終わるよりはいい。


そして、あがることは、悪いことではない。
「ドキドキ」は、すなわち「ときめき」。あがっている人はチャーミングである。
自分を良く見せたいのは、見栄ばかりではなく、向上心の表れ。
現状に甘んじていないからこそ、あがる。あがらなくなったら、進歩も止まる。
ドキドキしながら、ちょっと背伸びして、それぞれの舞台で、精一杯自分らしく
振る舞えばいいのだ。