6月24日 思い切り、正面突破

数年前から趣味で習っている邦楽の端唄(はうた)。
唄も難しいが、三味線の手の込んだところは、何度練習しても、うまくいかない。
曲を弾きながら、「ああ、もうすぐあの箇所だ」
意識すると、ますます手先が縮こまって、失敗...。
練習するほど、かえって下手になっていくような気がする。


「丁寧に弾かないで、思い切り弾いてみた方がいいんじゃない?」
と、端唄の師匠。そうだ、と思い切って撥(ばち)を振り下ろす。
相変わらずダメ、ではあるが、おそるおそる弾いているよりも、何だか爽快。
もう一回チャレンジしよう、と前向きな気持ちになる。


「サシスセソ」
「ラリルレロ」
アナウンサーには各自、発音しづらい音がある。
サ行とラ行が二大難物だが、人によっては、「カ行」だったり「タ行」だったり...。
「手術」という言葉が、どうしてもうまく言えない、というアナウンサーもいる。
ニュースやナレーション原稿に、自分の苦手な言葉を見つけた瞬間から、口のまわりの筋肉がこわばる。
意識すればするほど、成功の確率は低い。


「怖がらないで、正面突破よ!」
と、新人アナウンサー研修で、私はいつも言っている。
あれ、端唄の師匠と同じアドバイスだ。
ジャンルを超えて、表現のコツには共通のものがあるらしい。


稽古中、そんなことを思いながら、
よし、もう一度!と、思い切り三味線の撥を振ったら...
手首をひねりそうになってしまった。