前回に続いて、重箱の隅を楊枝でほじくるような、言葉遣いに関する話。
今回は逆に、丁寧さが足りず、雑な感じのする表現について書いてみたい。
「○○なのだそう」
ナレーションで、最近しばしば耳にする言い方である。
「ここでは××が、人気なのだそう」
「休日はもっぱら食べ歩きをしているんだそう」
最後まで言い切らずにやめてしまった感じで、聞いていて落ち着かない。
語尾の「です」をきちんとつけて、「~~だそうです」と言ってほしい。
くだけたお喋りの感じを出したいならば、
「~~だそうな」と(古臭いけれど)柔らかく言う手もあるし、
「~~ですって」とか「~~という話」とか、工夫の仕様はあると思う。
言いさす形も、ニュースや情報番組で多用されている。
「浮かび上がってきた問題点とは?」
「今後は、△△することも可能に」
「○○が原因で××に影響が」
いずれも文の後半、述語が省略されている。
短くて、インパクトもあるが、毎日のように使われると、いささか耳につく。
変則的な言い方には、変化球の妙はあるが、時折投げられてこそ、効果的なもの。
頼ってばかりいると新鮮さも薄れ、本来の形を見失いかねない。
昔、番組で共演していた噺家さんに、
「野球のヒーローインタビューで、気になることがあるんだ」と言われたことがある。
「例えば『見事なホームランでした!』とか『これで3連勝です!』とか言って、マイクを選手に向けるけど、疑問文、つまり質問する形になっていない。ホームランの話なら『狙っていたんですか?』と続ける、あるいは、『見事なホームランでしたねぇ』と語尾に『ねぇ』ぐらいつけて尋ねてほしいな、アナウンサーならば」
高座で日々、お客さんと向き合って喋っているプロの、鋭く繊細な感覚に、なるほどと頷き、学ばせてもらった。
普段、話す言葉は、家庭料理の味付けに似ている。
過不足なく、心地よく、味わい深く、と思うのだが、これがなかなか難しい…。