7月2日 研修の目的は?

日曜朝の番組「日テレアップDate!」で、新人アナウンサー研修を紹介するため、
先日、私が講師をつとめた時間に、撮影が入った。
 
2時間のナレーション研修。終えて、部屋を出ようとしたら、撮影スタッフが
「井田さん、ちょっと話を聞かせて」
マイクを持ったディレクターが、
「研修の目的は?何を教えようとしているんですか?」
 
基本的な質問なのに、すぐに答えられない。
「えーっと、ですねぇ。表現と伝達の基本、つまり、自分が思っている自分と、他人から見た自分は違う。表現しているつもりでも、受け手はそう感じていない。その差を縮めて、情報がきちんと伝わるようにするためにはどうすればいいかを...云々」
と、くだくだしい説明になってしまった。
  
「話をコンパクトにまとめなさい」と、新人たちには説きながら、このていたらく。
このインタビューは使えない(放送できない)な、と妙なところで職業意識がはたらく。
  
延々と喋って、「おつかれさま」と、研修部屋を出たところで気がついた。
こう言えば良かったんだ。
  
「『伝える』と『伝わる』は違う。『伝えた』ことが、視聴者にきちんと『伝わる』ための、
心構えと技術を磨いているのです!」
  
なかなかカッコイイ。よし、今度尋ねられたら、こう答えよう...なんて、「今度」とお化けは、出たためしがない。
こうしていつも、「証文の出し後れ」。これが私の仕事の現実だ。
くだくだしい話の最後に、こんなことも喋った。
  
「研修は、失敗談の伝承ですかね。うまくいかなかった体験の積み重ねを後輩に伝え、よりよい仕事につなげていく...」
  
研修部屋の隅で、新人たちが神妙な顔つきで聞いていた。
その日の研修で、彼らの一番の収穫は、私の下手な話しぶりだったかも知れない。