7月16日 デザイン

20年以上も前の、ある雨の日。
会社の私の置き傘を後輩の藤井貴彦アナウンサーに持って帰られたことがある。
その日、私は傘の用意があったので不自由はなく、気づきもしなかったのだが、
翌日、アナウンス部の傘立てに「どなたのか存じませんが、紺色の傘をお借りしました。
無断ですみません。ありがとうございました。貴彦」と張り紙があった。


貴彦くんに「あれは私の傘」と言うと、見る見る恐縮し、顔を赤らめ「すみません!」の連発。
「いえ、別に。役に立って何より。でも、数ある置き傘の中から、
どうしてあの傘を選んだの?」と尋ねると、貴彦アナは言いにくそうに、
「あのォ、絶対に女性の傘ではない、と思ったので...」
大ぶりで武骨な、濃紺の傘だった。


男物、女物、という言い方も古くさい響きだが、かつては、機能性を追求すると男物の方が使いやすい、
ということがしばしばあった。
傘、ハンカチ、そして洋服も、男物のジャケットには付いているポケットが、
女物のスーツにはなかったり、あっても飾りポケットだったりする。
中継先で、リポートのためのメモをしまおうとしたら、飾りポケットだった、という経験も。
まあ、選ぶときに確認しなかった私が迂闊なのだが...。


美しさと機能性を両立させてこそ、真に優れたデザイン。
昨今のパンプス問題も、職場のルール見直しはもちろん必要だが、
長時間履いても疲れず、見た目にもおしゃれな靴が欲しい。
今もどこかにあるのかもしれないが、価格も含めて入手しやすい状況になってほしい、とつくづく思う。
性別にとらわれず、ひとりひとりが自分の個性を生かして働く時代。
21世紀のデザイナー、靴職人ならば、素敵な答えを見つけてくれるのではないだろうか。