7月30日 テレビの三角形

「両方の黒目が、視聴者から見える位置でね」
と、新人の頃、アドバイスを受けたことがある。
 
スタジオで司会をしていて、隣の席のゲストに話を聞く場合、
つい、ゲストと向き合う形で真横を向いてしまい、
私の片目しかテレビに映っていないことが多い。
そうなると、視聴者は司会者にそっぽを向かれた感じがして、つまらなくなる、という。

「画面の奥の方の目、つまり、右を向いたら右目、左を向いたら左の黒目が、画面に映っているように心がけて」
数年先輩の女性アナウンサーが、視聴者と"目を合わせる"方法を優しく教えてくれた。

同じことを、ディレクターはこんな風に言っていた。
「2人のスタジオトークでも、視聴者という聞き手が参加している座談なんだ。
テレビを見ている人とゲストと司会者の"三角形"だよ」
なるほど、と思いながら、不器用な私は、
なかなか程良い角度の位置取りができなかった。今でも、ヘタである。
先輩アナも、さらに先輩から教わったことなのかも知れない。
ちょっとしたことだが、テレビの世界に伝わる「コツ」。 
 
「男女2人のキャスターでニュースを伝えるときは、
横に延ばした手の先が、もう一方の肩に届く、くらいの間隔がちょうどいい。
それ以上離れていると、キャスター同士の仲がよくないように見える。
逆に、間隔が狭いと、なれなれしい感じがする」
と、話していたのは、ニューススタジオのカメラマンだったかしら...。

これもまた、伝え手の2人と視聴者を結ぶ"三角形"の、
心地良いバランスを探し求めて得られた結論なのであろう。
テレビが横長になった現在でも、この「距離の法則」は当てはまるのだろうか?
 
随分前のこと。
テレビを見ていたら、漫才師の横山やすしさんが、寄席での、足の向きについて、語っていた。
「横を向いて、相方に話しかけるときは、両足のつま先を客席に向けて揃える。
正面向いて、お客さんに話すときは、足を90度開いて、相方側のつま先だけ真横に、相方の方に向けますのや」
ダンスのステップのような、軽やかで絶妙な身のこなしが、今も目に浮かぶ...。
 
 "三角形"作りのコツは、いろいろな人が教えてくれる。