12月2日 田邊 研一郎

「イギータ速い!0.5秒!!」
 
今から27年前の12月17日。サッカークラブチーム世界一を決める
トヨタカップ。
超人的な反応を見せるコロンビア人ゴールキーパー・イギータのプレーに
驚きの声をあげるアナウンサー。
12歳になったばかりの私は テレビの前でイギータのプレーに釘付けになっていた。
  
反応が速いだけでない、ペナルティエリアを飛び出してヘディングでクリアするのは当たり前、
時にはボールを持つとドリブルを始めて相手陣内まで突き進んでしまう。
当時「エル・ロコ」狂人というニックネームで愛されていたイギータのプレーを見て、
なんという「型破りなゴールキーパーなんだろう」
と思ったのをよく覚えている。
対戦相手はイタリアの名門ACミラン。
マルコ・ファン・バステンやルート・フリットというスーパースターも霞んでしまう
ぐらいのインパクトだった。
 
試合は延長後半残り2分、ACミランのエバー二の直接FKが決まり、
イギータ擁するナシオナルはクラブ世界一の座を逃した。
ゴールを決められた瞬間、悔しさを顕にするわけでもなく、ただ前を見据えていた。勝負に敗れても堂々と振舞う姿に
当時ゴールキーパーを始めたばかりの私も少なからず影響を受けた。
 
あれから27年。
イギータを擁して南米チャンピオンとなったアトレティコ・ナシオナル(当時はナシオナル・メデリンという表記)が
27年ぶりにコパ・リベルタドーレスを制し再び南米王者として日本にやってくる。
 
12月8日に開幕し18日に決勝が行われるサッカークラブチーム世界一決定戦 
FIFAクラブワールドカップジャパン2016。
ホストブロードキャスターとして全世界に映像を配信する私たち日本テレビは
10月下旬に南米・コロンビアへと向かった。
 
アトレティコ・ナシオナルの試合、練習、選手取材のほかに、イギータへのインタビューも大きな目的の一つだった。
 
今でもクラブのアイドルとして絶大な人気を誇る、ホセ・レネ・イギータは
コロンビア第3の都市メデジン郊外の別荘でゆったりと暮らしていた。
 
温かく私たちを迎えてくれたイギータは、予定の30分を超えて1時間以上もインタビュー取材に対応してくれた。
 
イギータに「あなたは何故、あのようなプレースタイルになったのですか?」と問いかけると、
「ゴールを守るという哲学は他のGKと変わらないよ。でも僕は子どもの頃からボールが大好きだった。
ボールが自分のところに来るとそのボールは僕のものだ、誰にも渡さないぞ。という気持ちになった。
その純粋な気持ちを大人になってもそのままピッチで表現しただけさ」
  
という答えだった。実に明確でピュアな考え方だが、
驚いたのは「僕は他のGKとなんら変わらない」という「基本的な型」の上にイギータ自身の哲学が
染み込んでいるところである。
  
私は元日本代表監督で現在FC今治のオーナーを務める日本サッカー協会副会長の岡田武史さんの
「型のないところに型破りは生まれない」という言葉を思い出した。
岡田さんは「まず日本人にあったサッカーの型」を作り、
そこから日本のサッカーを発展させワールドカップで優勝する日を夢見てプロジェクトを進めていらっしゃる。
「型破りは型があるから型を破れる」という考え方は
ブラジルワールドカップ後にスペイン人コーチとの会話の中でインスピレーションを得たとおっしゃっていた。
  
イギータも型破りなGKと評されたが、ゴールを割らせないというGKの基礎技術は超一流であり、
その上に自らの信念に基づいて、あの型破りなプレーに結びついていたのだ。
 
イギータに少年時代にあなたのプレーをテレビで見ていたと伝えると、快くサインに応じてくれた。
そして「僕は夢はナシオナルのクラブを経営する幹部になりゴールキーパーの学校を作りたいんだ」
と夢を語り出した。イギータの目は少年のようにキラキラしていた。
  
私自身も型を身につけ、いつまでもキラキラとした目で夢を追いかけなければと強く思った。
  
最後にイギータは「ナシオナルは夢を見るものの集まりだ。その夢の一つがクラブ世界一だ」と力強く話した。
最大のライバルはクリスティアーノ・ロナウド擁する欧州王者レアル・マドリードになるだろう。
  
クラブ世界一を決めるFIFAクラブワールドカップジャパン2016は12月8日開幕!
南米王者アトレティコ・ナシオナルの初戦は14日(水)、
欧州王者レアルマドリードの初戦は15日(木)、
決勝戦は18日(日)
乞うご期待!
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