1月9日 平松修造


全身の毛が逆立つような瞬間がある。


箱根駅伝だ。
もっとくわしく言うと、実況がいよいよ迫る瞬間の、
視界の遠くにようやく選手の姿を捉えた瞬間。


選手を見つけた沿道の観衆が遠くから沸き始め、
選手が近づいてくるとともに歓声もこちらに近づく。
歓声が、走る。選手の、少し前を走る。


2020年1月2日・3日、第96回箱根駅伝。
今大会は平塚中継所の実況を担当。
往路・復路ともに区間新記録の瞬間を実況する機会に恵まれた。
選手達にはもちろん及ばないが、
とにかく夢中、一心不乱とはこのこと。実況中はそんな時間だった。


一生懸命、年末年始を返上して資料をたくさん作ったのに、
今年もほとんど使わなかった。
かっこいい表現をたくさん言ってやろうと肩を回していたのに、
用意していた原稿はほとんど使えなかった。


区間新が出る襷リレーの直前に、
「歴史が変わる瞬間をご覧いただきましょう」と咄嗟に言った。ほんとうに咄嗟です。
「いや、お前誰やねん!どの立場で言ってんねん!」というツッコミも聞こえてきそうだが、
本当にそう思ったんだから仕方ない。
まばたきすら我慢して観て頂きたいと思ったのだから、仕方ない。


でも、それでいいのだと思える。
それがいいのだと思える。


それほどに、目の前で起きていることが衝撃的で、感動的で、
用意した原稿よりも余程、伝えるべきことなのかなぁと感じた。


箱根路を目指すランナーたちは1月4日から練習を再開する。
同じように私も、1月4日から、来る第97回箱根駅伝の実況を目指している。
早く、次の箱根駅伝が来ないかなぁ、と、思い焦がれる360日くらいが始まる。


ちなみに、箱根駅伝が終わった日、1月3日。
この日に飲むビールが、1年で一番、世界で一番、おいしい。


遅ればせながら。
あけまして、おめでとうございます。


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