11月5日 中野 謙吾

1ヶ月半に及ぶ楕円球の祭典は
ニュージーランド・オールブラックスの史上初大会連覇という形で幕を下ろした。
 
ラグビー中継に携わって今年で9年目。
W杯はフランス大会、ニュージーランド大会に続いて3大会目だった。
 
しかし今回はあまりにも色々なドラマが起こった。
その中でも一番のサプライズは日本代表の南アフリカ撃破だろう。
世界中のラグビー関係者、日本代表のファンですらその勝利は予想していなかったのではないか。
 
現地イギリスでは道を歩くと日本人というだけで
「おめでとう!!日本はすごいな!!」と声をかけられた。
 
ラグビーはそもそも母国以外でも素晴らしい戦いをしたチームには
スタジアムで大きな声援を送る文化がある。
ラグビー発祥の地イングランドではなおさらだ。
そんなラグビーファンたちの心に日本代表の戦いはストレートに響いた。
 
日本代表はその後も快進撃を続け終わってみれば3勝1敗。
敗れたのは中三日という、とんでもなく不利な状況で戦ったスコットランド戦1試合だけ。
3勝したのに決勝トーナメントに上がれなかった史上初めてのチームとしてラグビーファンの記憶に残った。
まさに「史上最強の敗者」として大会を終えたのだ。
 
私自身、日本人であった事を誇らしいと思えた1ヶ月半だった。
4年後、ラグビーW杯は日本で開催される。
北は北海道から南は大分まで少なくとも11都市で開催される予定だ。
今、日本は空前のラグビーブームに湧いている。
五郎丸選手のキックポーズを日本全国の子供達が真似している。
私は今大会を中継した一人として、この火を消すことなく、
4年後、さらにはその先まで、燃やし続ける努力をしたい。
それこそが世界中に「体の小さな日本人でも世界で戦える」という事を証明し、
たくさんの勇気を与えてくれたラグビー日本代表への恩返しだと思っている。