7月21日 森圭介

こんばんは、と言いたい。

 

勝手に言えばいいじゃあないかと言われてしまえばそれまでなのだが、私は言いたいのである。テレビ周りの職場では、現場に入って誰かに会った時のあいさつは、おはようございますと相場が決まっている。それが昼下がりだろうが、真夜中だろうが、仕事場でのあいさつは、おはようございますなのだ。仕事柄、時間が不規則な職場なので、昼夜関係なくそうなったと昔聞いたことがある。真偽のほどはよく知らないが、そこで「そんなの俺は絶対に認めない!」というほどのことでもないので、まぁしたがっている。長いものに巻かれている。

 

そんな私は今年の4月からZIPという番組についている。朝早い。ということは早く寝る。夜8時半には横になっている。元来、大人の8時半なんてものはちょうどいい時間で、まさにここからが本領発揮といったところなのに、私の1日はもう終わりを迎えている。夕方前には家に帰り、陽が沈む前には食事を済ませ、本領を発揮する前に寝る。

 

お分かりだろうか。こんばんは、というタイミングがないのだ。もう、かれこれ15年くらいは口にしていない。おそらく口も言い方を忘れている。こんば、まで口にしても、んは、が自然に出てこない。コンバイン、の方がよっぽど言いやすい。あいさつがすっと出てこないなんて、言葉を生業にするものとして許せない。そんな自分とコンバットしたい。私もいい歳なので、どうせできないと諦めることなく、コンバージョンできるように精進するつもりだ。

 

もし夕闇に包まれた頃、街で私を見かけた際には、ぜひ声をかけてほしい。あなたの優しさに私は心からこう伝えるだろう、ありがとう、と。