3月16日 中島 芽生

「こんなに塩むすびが美味しいなんて。」

うっすらと、舌の上で探さないと感じられないほどの少しの塩気と、噛むたびに広がるお米の甘み。

そこに添えられているのは一粒の梅干しと、お漬物だけ。

それでも「ご馳走を頂いている」と心から感じることが出来たのは、高野山で過ごした貴重な3日間があったからだと、しみじみ感じました。

 

先日、以前から気になっていた高野山へと出かけました。

世界遺産に登録されてから外国人の旅行客も増えているそうで、

町中を歩いていると、お寺の鐘の音が響く中、英語など外国語が聞こえてきて、そのミスマッチさがなんとも楽しく不思議な気分になります。

 

せっかくならと宿坊に泊まり、食事も3日間全て精進料理。

また、観光客でも写経や瞑想、朝の勤行に護摩祈祷、さまざまな体験をすることができ、小さな町ながら次は何をしようかと迷うほど。

特に驚いたのは、まずは精進料理のバリエーションの豊富さです。

とろとろになるまでじっくりと火が通されたナスの田楽も、白子の天ぷら⁉と間違いそうになる高野豆腐の湯葉巻き揚げも、

どれも滋味深く、何より満腹になるくらい食べても重たくない!30代に突入した胃にはとても優しい食事でした。

そんな中、修行体験で印象に残ったのは、自分の呼吸に集中し「今」を感じながら過ごす、瞑想の時間です。

呼吸の数をひたすら1から10まで数え、そしてまた1に戻って数え続けるというものなのですが、

11,12・・・と増やしていかず、1に戻るのは「次は100までいこう」などと目標を決めてしまうと、今、自分の呼吸に集中できなくなるからだそうです。

ただこれが始めてみると、10どころか、5回も数える前に、他の事を考えてしまい途切れてしまう…。

いかに自分が過去と未来ばかりを見ているかを実感しながら、様々な修行体験をし、歴史を学んでいくと、

不思議とぐるぐると頭を駆け巡っていた思考がゆっくりとスピードを落とし始め、心が静かになっていくのを感じました。

そして3日目となる最終日。

宿坊の方が握ってくれたおむすびを片手に高野山から帰っていく途中で、冒頭の塩むすびを口にしました。

たった3日。それでもいつもより少し削ぎ落された生活をするだけで、味覚も思考も心もシンプルになり、

自分の感覚を大切にすることができるようになった気がした瞬間でした。

この4月で入社丸10年を迎えます。11年目、ではなくまた1年目からスタートする気持ちで、1日1日を大切に過ごしていきたいです。