《野外での婚礼の踊り》ピーテル・ブリューゲル2世 1610年頃 Private Collection

High lights みどころ

画家一族 150年の系譜

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イタリア・ボローニャで行われた展覧会の様子
Brueghel. Capolavori dell'Arte Fiamminga - Palazzo Albergati, Bologna 2015 Photo © Danilo Alessandro
16世紀のフランドル(現在のベルギーにほぼ相当する地域)を代表する画家ピーテル・ブリューゲル1世。聖書の世界や農民の生活、風景などを時に皮肉も交えながら描き、当時から高い評価を得ました。息子のピーテル2世、ヤン1世も父と同じ道を歩みました。長男のピーテル2世は人気の高かった父の作品の忠実な模倣作(コピー)を描き、次男のヤン1世は父の模倣にとどまらず、花など静物を積極的に描き、「花のブリューゲル」などと呼ばれ名声を得ました。さらにヤン1世の息子ヤン2世も、子供の頃から父の工房で絵を学んで画家となり、ヤン2世の息子たちもまた同じ道を歩み、ブリューゲル一族は150年に渡り画家を輩出し続けたのです。(ちなみに農民の生活を多く描き、本展にも出展されるダーフィット・テニールス2世は、ヤン1世の娘の夫です。)本展では、このブリューゲル一族の作品を中心に、16、17世紀のフランドル絵画を紹介します。
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貴重なプライベート・コレクション、
そのほとんどが日本初

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《野外での婚礼の踊り》
ピーテル・ブリューゲル2世
1610年頃 Private Collection
本展では、ピーテル・ブリューゲル2世による《野外での婚礼の踊り》などブリューゲル一族の画家たちが生み出した宗教画、風景画、寓意画、静物画などおよそ100点を展示。その多くが、通常観ることのできない貴重なプライベート・コレクションに収められています。そのため、出展される作品のほとんどが日本初公開となります。

細密絵画のルーツと伝統

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ヤン・ブリューゲル1世
《水浴をする人たちのいる川の風景》
1595-1600年頃 Private Collection
ピーテル1世が亡くなったのは1569年。長男のピーテル2世は5歳頃、次男ヤン1世はわずか1歳頃のことでした。父と同じ道を歩み、父の作品の模倣作(コピー)も描いている2人ですが、どのように絵を学んだのでしょうか。父の工房にはお手本となる作品も残されていたと思われますが、2人に絵の手ほどきをしたのは、ピーテル1世の義理の母、2人にとっては祖母にあたるマイケン・ヴェルフルストだと言われています。彼女は当時としては珍しい女性の芸術家で、1567年に出版された書物の中でも、最も優れた女性芸術家の1人として取り上げられるなど高い評価を得ていました。今回の出展作品には縦・横30cm未満の比較的小さな作品が多く含まれていますが、いずれも驚くほど細部を描きこんでいます。例えば、ヤン1世による《水浴する人たちのいる川の風景》は、わずか17×22cmの作品ですが、水面に映る人影まで細かく描かれています。単眼鏡やオペラグラスの携帯もお勧めです。

「工房作」・「共作」とは

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《机上の花瓶に入ったチューリップと薔薇》
ヤン・ブリューゲル1世 ヤン・ブリューゲル2世
1615-1620年頃 Private Collection
本展には工房作や共作が多数出展されています。工房作とは、画家が自身の弟子たちに指示して描かせた作品です。師匠である画家の監督の下、弟子たちは師匠の下絵にもとづいて描いていきます。人物の表情などの重要な部分を最後に師匠自身が描くこともあります。たとえ画家本人が直接描いていなくとも、弟子たちは師匠の指示通りに描いているため、作品にはその画家の創意や構想が表されているとみなされました。
一方、複数の画家が共同してひとつの作品を描くこともあり、それは共作と呼ばれます。物語画や寓意的な主題において、人物を描く画家と、風景や静物の専門家が分担して描く作例などが多く見られます。共作は画家自身が別の画家に依頼する場合もあれば、注文主が複数の画家に共作での制作を依頼することもありました。