渚の記録

現状調査

渚の場所

東京湾の工業地帯の一角。南方向に海が開けているが、他、三方向には工場が立地していることもあって水の流れが少なく波はほとんどない。この場所は横浜市が管理する公用地だが、今回は特別に許可を頂き使用させてもらう。

渚の地形

海岸部分の地形は砂ではなく貝殻が堆積して出来上がっており、風と潮の影響で無数のゴミが流れ着いている。貝殻の浜になっているところからは見た目は水が澄んでいるように見えたが、歩くと足が沈み込んで身動きが取れなくなるほど、ヘドロが多く堆積していて、悪臭もした。
岸の部分の中央辺りにはトンネルのような水路が開いている。中を調べてみると、そこはきれいな真水が流れ出していることが分かった。海水専用の塩分濃度計を使い、水質調査を行なうと、真水と海水が混ざり合っていることが分かった。

生物の確認

トンネルの調査を終えると海の状況が変化し、潮が引いていた。何か生物はいなかと調べてみると、潮が引いた岸の部分からケフサイソガニとシロスジフジツボを発見した。生息を確認できた生物はどちらも 汚れた場所でも生きていけるものだった。同時に海の中も調べたが、その他の生物を発見することはできなかった。

魚が泳ぐ海にするためには

魚が泳ぐきれいな海にするためにはどうしたら良いのか。それを学ぶため海洋環境専門家の木村尚さんに色々と伺った。生物が多く住むきれいな場所にするには、東京湾に元々あった姿に戻すこと。
干潟を取り戻せば生態系が復活し、魚や海の生き物たちにより良い環境となる。まずは干潟をつくることが目標。

干潟に重要な生物

干潟に重要な生物にはどんなものがいるのか。木村さんが研究活動をしている人工干潟に案内してもらい、そこで学ぶことにした。
まず人工干潟にいたのはゴカイという生物。ゴカイは畑でいうとミミズと一緒で、堆積した有機物を食べてくれ、土壌を浄化してくれる役割をもつ。
続いての生物はアサリ。アサリは濾過食者であるため、水質浄化機能が期待でき、汚れた水質を綺麗にしてくれる。
そこで、アサリの水質浄化機能を調べるための比較実験をした。まず、アサリと海水を入れた水槽と海水だけをいれた水槽を用意し、そこに同量の米のとぎ汁を入れて様子を観察。すると、15分ほどで白く濁った水は濁りが消えて透明な状態になった。

■海洋環境専門家 木村尚さん

海の環境について研究、活動しており、東京湾はもちろんのこと、その他、全国各地の海についての多く知識を持っている海の専門家。
埋め立てられた東京湾ではなく昔ながらの自然豊かな泳げる東京湾を目指して、環境改善のための藻場造成や人工干潟造成に着手している。
具体的には子供達が海に親しめるようにお台場でワカメを養殖するイベントを開催したり、各地で海洋環境に関する講演を行ったりと、人と海との共生を目的とした様々な活動を行っている。
今回見学に行った人工干潟「潮彩の渚」の造成にも関わっており、干潟にいるゴカイやアサリなどを初めとする生物の調査を定期的に実施している。

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