工房日誌

♯1 線香花火どれだけ大きく長〜く 輝くか!?2010/07/11

瞬く間に終わる線香花火を見つめて、夏男の達也はふと思った…
「もっと長く続けばいいのに」
夏の風物詩、線香花火がいつまでも続けば、夏もいつまでも続くのでは?
そんな願いから始まった、火球が大きくて長く輝くオリジナル線香花火づくり。
線香花火の平均燃焼時間は40秒。火球の大きさは4ミリ。
目指すは4ミリ以上の火球。そして吉田拓郎の名曲『せんこう花火』の演奏時間、2分9秒以上。
まずは線香花火の構造を知るため、線香花火製造所、福岡県みやま市の筒井時正玩具花火製造所を訪れる。
線香花火の材料は、紙と火薬のみ。
火薬は、発火と燃焼を助ける硝石、火球の役割をする硫黄、火花を起こす松煙と、3つの原料をある比率で配合したもの。
しかし、火薬だけでは線香花火はできない。
線香花火は、火薬を和紙で巻くことにより、はじめて火球ができる。
松煙、生成物、酸素の3つが科学反応を起こし、火花を散らす。
飛び散った火花は、さらに周りの酸素と反応し、新たな火花となる。
火薬を包む和紙の厚さはわずか0.05ミリで、これを縒ってこよりにすることが加減の難しい職人技。
火薬と和紙の役割を学んだ所で、大きくするための材料探しへ。
薄くて丈夫な和紙、火薬の原料(硫黄・松煙)を集める。
火球の素になる硫黄を求めて訪れたのは、大分県由布市の塚原温泉。
源泉のある伽藍岳(がらんだけ)は別名硫黄山と呼ばれ、そこに付着する硫黄をゲット!
一方、火薬を包むための丈夫で薄い和紙は、福岡県八女市(やめ)で探す。
八女市の楮(こうぞ)は村のものより優れ、経験のある城島により厚さ0.05ミリ、強度も納得の丈夫な和紙に仕上がった。
大きく長い線香花火の材料集め、最後は松煙。
20〜30年寝かせた赤松の煙のススが、室(むろ)と呼ばれる部屋に松煙となってたまっていく。松煙も袋いっぱいに調達成功。
集めてきた硫黄と松煙、そして筒井さんにお借りした硝石で火薬づくり。
不純物を取り除き、通常の線香花火の約100本分の火薬が完成。
和紙は時間をもたせる長方形に。さらに厚く巻いて火球の落下を防ぐ。
ついに完成したオリジナル線香花火は“香(かおり)"と命名。
だが期待とは裏腹に、香は一瞬輝くも6秒で落下。
煙を吹き出し、爆発したような状態に。
原因は、火薬は密集させると激しく爆発する性質があるため。
例えば、ねずみ花火を火薬量100倍にして点火してみると…
小さければチョロチョロ回るが、巨大なねずみ花火は火薬が密集しているため、一気に火が回り、爆発してしまう。
「もっと(火薬を)縦に伸ばすために、練った方がいいのか。」
そこで今度は、練り火薬を使ってみることに。
ヘビ花火などに用いられる練り火薬は、様々な形に応用ができ、徐々に引火する性質がある。
実際に、通常のヘビ花火20000個分の大きさで試してみる。
徐々に引火し、ニョロニョロと1.3mのヘビ柱ができた。
練り火薬で、オリジナル線香花火“燃えちゃん"が完成。
着火してみると粉状の火薬とは違い、徐々に火が伝わり火球のように。
しかし火花は出ず、くすぶったまま消えてしまった。
火薬の量が増えた一方で、空気の量は変わっていないため燃え残り、温度が上がり切らなかったのが原因。
「風おくるか、酸素おくるかせんと」
線香花火に直接パイプで吹いて空気をおくり、温度を上げる作戦。
必死に空気をおくり続け、大きな火球は落ちたがまだ残っている。
そして、きれいな火花が散った!
オリジナル線香花火の最終結果は…
火球の大きさ1.5センチ。継続時間は1分26秒。
達也にとって長く楽しい夏になりそうです。

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