幻の王冠!! ミルククラウンはかぶれるか!?

 それは楽しい給食の時間飲もうとした牛乳がついこぼれてしまい、がっかりしたその時、机から落ちる雫に思わず見とれる。牛乳が作りだす小さくて不思議な芸術、それが牛乳の王冠「ミルククラウン現象」。あの一瞬にして消えてしまう白い冠を、王様のように頭にかぶせることはできないだろうか?

幻の王冠!! ミルククラウンはかぶれるか!?

 とある一室に集った太一・松岡・長瀬、まずは実際にミルククラウンの出来る瞬間を捕えて分析することに。撮影に使うのは「スーパースローカメラ」プロ野球中継などでおなじみの鮮明なスローモーション画像を映し出す超高性能カメラ! 皿に牛乳を注ぎ、そこに松岡がストローで吸い上げた雫を落とす。そしてスーパースローで見ると、波紋がなめらかに広がるが王冠状にはならずミルクの表面がもっと弾けなければダメらしい。そこで雫の高さを上げてみると、キレイな形ではないが白い王冠が一瞬立ち上がった! 美しいミルククラウンを作るのは意外と難しい。

 しかし、目標は一滴による現象からかぶれる大きさにすること! 3人はその方法を探るため、東京工業大学 理工学研究科の工学博士・矢部 孝教授を訪ねた。矢部先生は数値流体力学の研究で世界的に知られる一方、ミルククラウン現象の研究ついては日本の第一人者である。ここで、先生によるミルククラウン特別講義開始! これらの実験は1800年代から行なわれており、その大きな要素は3つ「液体」を薄く敷き、そこに雫の「衝撃」が加わり液体が「反発」すると王冠状になる。そして王冠が出来はじめてから崩れるまで「約0.2秒」、その一瞬を固めるには「瞬間冷凍」か? 矢部教授いわく「出来るかもしれませんね」と期待の持てるコメント! すなわちミルクに雫を落とし、クラウンが出来た瞬間に固められる場所が必要。

 果たして、3人は幻の王冠を手にすることができるのか?

 太一・松岡・長瀬がやってきたのは、千葉県船橋市にある食品加工冷凍の(株)ヨモ七。ある建物に入ると長瀬絶叫!! そこはマグロなどを保存するための冷凍庫! さらに奥へ入ると、そこは「−30℃」の世界! すると長瀬の鼻毛が凍り、全員1分と持たずに退散! この環境下であればミルククラウンの瞬間冷凍も行けるか!? 3人は完全防備で再び突入! すると、中ではなぜかクマがマンガを読み、驚いて立ち上がったかと思ったら凍った床でスッ転んだ! さらに冷凍マグロを見つけ、「魚拓採りて〜!」と叫ぶ太一。倉庫に入って1分が経つと、タオルがパリパリに凍った! さらに松岡が凍った床でブレイクダンス!

 そしていよいよ実験にとりかかる! まずは矢部教授に教わった方法「薄く敷いた牛乳に液滴を落とす」。素早い作業で大きめの容器にミルクを薄く伸ばすが、すぐに凍った! 今度は小さな容器に変えてしっかりとミルククラウンを作ってみる。そしてスーパースローで見ると、鮮やかな王冠が出来たが、固まることなく消えていく。難しい瞬間冷凍さらに薄くして凍っていくタイミングを探る。とその時、寒さに耐えきれず全員退散! −30℃では5分が限界の目安だが、既に8分が経過していた! 表に出ると、太一のまつ毛が凍ってた!

 仕切り直して再び−30℃の世界へ。続いての実験は「厚く敷いた牛乳に液滴を落としてみる」。とその時、スーパースローカメラに異常が機材のコードが凍って切れた! ここで撮影中断、ひとまず退散して修理にかかる。すると、松岡が先ほどの容器を見て気づいた凍りかけのミルクならクラウンが一瞬だけ固まる。クラウンは弾けたミルク、よってそれが既に凍りかけていれば固まる公算も高い!

 撮影機材が復活して実験再開! 今度は「雫を落とす前に容器のミルクをシャーベット状にする」。そして注目の一滴スーパースローで見ると、一瞬固まりかけてから飛び散り、わずかにクラウンの形を残すことが出来た! それより小さなクラウンだとさらに固まる傾向が強く、崩れはしたがクラウンの形がくっきりと残っている! さらに松岡がスポイトで雫を落とすが、手がかじかんで思うように注げず、ここでまたも退散!

 問題はミルクの固まる速度が遅いこと。ミルク以外で固まりやすい材料は何か? 3人は近所のスーパーで新たな材料探し。練乳・卵・水など次々とカゴに入れ、さらに松岡が夜食にと手にしたのは、カップラーメンのラ王! 材料を持ち帰ると早速調理開始! まずは牛乳1000ccに練乳200g×4本分加えた「練乳牛乳」。そして牛乳750ccに卵白6個分を加えた「卵白牛乳」。この2つをシャーベット状にして改めて冷凍実験! そして、もう1つのポイントは大きな雫を落とすことそこで、DASH特製巨大スポイトの登場!

 −30℃の中へ入り、まずは練乳牛乳で実験! 松岡が巨大スポイトで雫を落とすと、そのしぶきが長瀬の顔面を直撃! スポイトの大きい口は一滴ずつ落とすことが出来ず、結局お皿から垂らすことに。すると先程より固まりやすく、さらにクラウンらしくなった! 既に5分が経過し、太一は目を閉じるとくっついて見えなくなってしまう。続いて卵白牛乳を試すが、クラウンの形が歪み崩れやすい。こうして10分が経ち急に会話の減った3人。すると松岡が1人静かに退散それに気づいた太一、「1人で逃げんなよ!」。3人は以上の実験から白身より練乳の方が固まりやすいと判断。そして冷凍速度をさらに上げるには、−30℃よりもっと低い温度が必要。

 そこで、東京都港区の東京水産大学 特殊実験棟を訪れた。ここからのアドバイザーは、食品生産学科 食品冷凍学研究室の農学博士・鈴木 徹教授。冷凍室へ案内されると、そこはなんと−70℃! これまでに記録されている世界最低気温は1983年7月21日の南極ヴォストークで−89.2℃。それより若干温度が高いだけ!「これはいけるかも!」成功への期待が膨らむ。

 だが、限界の目安はわずか3分! 中が狭いことと3人それぞれの体力を考え、まずは太一が1人で実験! 容器に練乳牛乳を敷き、雫を落とそうとしたその時、スポイトが凍った! 手早くやらないとすぐに凍ってしまう。気を取りなおして運命の一滴しっかりとしたクラウンが確認できるものの、固まる段階で形が崩れた。続く二滴目が、スポイトがまたも凍った! モニター越しに見守る松岡と長瀬、鈴木先生によるとミルクや練乳を瞬時に凍らすにはもっと低い温度が必要となり、水の方がまだ凍りやすいとのこと。そして冷凍庫の太一は4分が経過し、ここでギブアップ!

 続いて松岡は凍りやすい水で試すことに。すると水でも王冠現象は起きていた! だが、弾けた瞬間に水滴が凍って散り、形にはならない。さらに凍ってきた水面に落としてみるが、水滴が弾ける前にすぐ氷と化し、水では無理だと判った! 攻め手に悩む3人、−70℃でも打つ手なしか? すると、鈴木先生が研究室から「液体窒素」なるものを取り出した。

 「液体窒素」空気中の約8割を占める窒素を超低温で液化させたもの。金属加工や血液の冷凍保存に使われ、その温度なんと「−196℃」ミルククラウンにどう応用するのか?

 タンクに入った液体窒素を容器へ移すと、大量の煙と共に液体が注がれ、なんとそこに鈴木先生が指を入れてしまった!! が、何ともない? それに松岡も続き、太一は後ずさり。実は手を触れた部分の液体窒素はすぐに気化し、手のまわりは気化したガスでコーティングされる。よって手を入れた瞬間(1〜2秒間)は冷たさを感じない。※但し、長時間手を入れると壊死してしまうため、1〜2秒の間に必ず手を抜くこと。

 早速作業にとりかかる。素早く行動しなければ、常温にさらされすぐに気化してしまう。小さな容器に液体窒素を注ぎ、まったくの手探りでまずは「練乳牛乳の液滴を液体窒素に落とす」。だが、反応しすぎてミルクが雫のまま凍るだけ。そこで今度は「練乳牛乳の入った容器を液体窒素で冷やし、そこに雫を落とす」。しかしクラウンの形にすらならない! 液体窒素は失敗か? 時刻は午前0時を過ぎたが、ここで止めるわけにはいかない! すると佐藤先生、「こんな事やって出来た人いないよ!」と研究室にとっても前代未聞の実験らしい。

 時刻は午前1時30分をまわった。策を練る3人、他に使えるものは何か。すると長瀬がひらめいた「ろう!」。ろうの温かい玉を液体窒素に落とせば、瞬時に固まるという計算らしい。すると松岡、それなら牛乳実験を続けたほうがいい、と意見が二分した! 牛乳実験続行派の松岡と、ろう実験推進派の長瀬、双方一歩も譲らず。レフェリーを買ってでた太一。そして2人の熱い議論は午前2時まで続き、長瀬が言葉に詰まったところで松岡に軍配があがった!

 それでも長瀬の熱意に打たれ、ひとまずろうを溶かして実験「ろうの液体を液体窒素に落とす」。すると、ろうは練乳牛乳より激しく反応して凍る。長瀬の分析では、液体窒素の温度が低すぎるため、クラウンになる前に凍ってしまうという。続いて「練乳牛乳の入った容器を液体窒素で冷やし、そこにろうの雫を落とす」。すると、瞬時に冷えたろうがクラウンのまま固まった! さらに長瀬の頭脳が冴える! 牛乳の皿の底を深くすれば、その分弾ける高さが増すはず! 長瀬の珍しいひらめきに太一と松岡、アイデアよりも長瀬にビックリ!

 こうして作業は続き、午前3時30分をまわってようやく実験終了!

 いったいどんなミルククラウンが出来たのか?「ちょっと大きくないかなぁ?」と太一の頭にのったのは、小指に十分のっかるカワイイ王冠DASH型ミルククラウン完成!! そこへ太一が持ち出したのは、小さな太一人形! その頭にクラウンをのせてみるがそれでも小さすぎ!

 氷点下と戦い夜明けまで挑んだ王冠づくり、次こそ大きいのをかぶらなければ挑戦は続く!

 今回の実験、実は1年も前から挙がっていた企画で、その間に様々な調査や実験が行なわれた。ところが実現の可能性は極めて低く、最後は太一・松岡・長瀬に委ねるしかなかった。そして小ぶりながらも現実のものとなり、TOKIOそしてスタッフにとって一年越しの苦労が報われた瞬間でもあった!

 −30℃の冷凍庫内で故障してしまった撮影機材、その修理にはかなりの時間を要し、3人はロケバスで待機することとなった。すると車内のテレビではシドニーオリンピックの模様が放送され、ちょうど柔道の田村亮子選手が決勝に挑んでいた。そして見事に金メダルを獲得し、3人も大騒ぎ! バスの中は興奮のるつぼと化した!