2017年12月17日 放送内容グリル厄介 ~沖縄県 陸を歩く外来魚~

今回、松岡と長瀬がやってきたのは、沖縄県。
加藤「日本の外来種2000種のうち1200種が沖縄にいる」
その侵入経路は、ペット用や食用など様々。
記憶に新しいヒアリは、海外からの貨物に紛れて侵入し、
港から瞬く間に広がったとされる。
これまでも沖縄で、鎧をまとった外来魚・プレコや、
最大2.7mの大蛇・タイワンスジオなどを捕獲してきたが、
こんなヤツらが、その暖かさ故、沖縄に数多く定着してしまっている。
まずは、外来種の目撃情報が多い農業用水を溜めるダムへ。
加藤「木が茂ってる辺りに行きましょう」
長瀬「(淵は)影になって狙われにくいから」
長瀬「しかも木からエサが落ちてくるからね」
つまり、ダムの淵は真ん中よりエサが多い上に、草木で身も隠せる格好の場所。
そこで、タモ網で淵の辺りをすくってみると、
加藤「入りました。これは“カダヤシ"」
以前も沖縄で見つけた、北米原産の外来種。
加藤「お腹の中で卵をふ化させる」
卵を食べられぬよう腹の中で孵化させるため繁殖力が強い。
雑食な上、食欲も旺盛。
加藤「こんなに簡単に捕まるのは(外来種の)数が多いから」
そして、長瀬のタモにも、
加藤「“プレコ"の赤ちゃん!」
子供がいるということは、ここで繁殖している証。
さらに、タモを淵に突っ込むたび、
加藤「これは“コンビクトシクリッド"」
観賞用に持ち込まれたものが放され繁殖。
つがいで稚魚を保護する上に、攻撃的で、他の魚を追い回して噛み付く。
名前の由来は、イギリスの囚人服のような縞模様。
さらに、同じ網に、
加藤「“グラスフィッシュ"。透明なのでよく見えずに厄介」
これも、元々は観賞用。
ガラスのような透明な体から、その名が付いた。
水中で静止すれば、より目立たない。
人だけでなく、他の魚でさえ見つけにくい。
こんな外来種たちに、古くから沖縄に生息していた
水場の生き物たちが脅かされている。
沖縄の市街地、ど真ん中を流れる川には、さらに厄介なヤツが。
長瀬「あれ、プレコじゃない?」
加藤「ここには固有種はいないかもしれない」
そんな外来種が幅を利かせる川にいるのが
加藤「ナマズの仲間で通称“クララ"」
学名はクラリアス。
東南アジアからインドにかけてが原産。
観賞用に持ち込まれた物が野生化した。
ナマズを英語でキャットフィッシュと呼ぶため
加藤「陸地を歩くので、別名“ウォーキングキャットフィッシュ"とも」
夜行性で攻撃的、在来種など他の魚の寝込みを襲うが、
エラでなくとも呼吸ができ環境が悪化すると陸地に上がって、
最長30分の移動も可能。
この川では、15年ほど前から、クララの姿が何度も確認されている…と!
長瀬「いた!あれじゃない!?」
見つけたのは、水面を移動する白い影。
クララは本来茶色だが、観賞用に品種改良され白色の種類も。
加藤「真っ白なマーブル模様やブチ模様のがいる」
よく見ると、同じ場所をグルグルと泳いでいるが
松岡「あそこ巣なのかな?」
長瀬「たぶん隠れ家なんじゃない?」
すると突然、クララが水面に顔を出し
松岡「ほら!いま息吸ったよ」
これが、クララが陸地を移動できる最大の理由。
加藤「空気呼吸のために水面に上がって息を吸う」
松岡「タウナギと一緒ですね」
それは、奈良にはびこる大陸からの侵入者。
スズキの仲間だが、エラが小さく
30分おきに空気を吸いに顔を出す。
松岡はそいつを、ミミズをエサに釣り上げた。
では、この要領で…
松岡「どうします?釣ります?」
加藤「クララは警戒心が強くて見慣れない物には近づかない」
日本のナマズは天敵が少なく、警戒心が弱いため釣りやすいが、
クララは原産国でワニやトカゲに狙われ続けている。
そんな危険をいち早く察知するため、
加藤「ヒゲは日本のナマズの倍、8本ある」
感覚器官でもあるヒゲが多い。
これで、あらゆる方向を警戒している。
加藤「我々の影や歩く振動でも逃げる」
つまり、釣りで捕獲するのは難しい。ならば、
長瀬「力技で追い込んで捕まえちゃうか」
加藤「出入り口が同じようなので、そこを塞ぐか」
そこで、川に入って捕獲開始。
加藤「そーっと、できるだけ物音立てずに」
しかし、もう先ほど目撃したポイントに、クララの姿はない。
カメラの影を気にしながらも出入りしていたクララだったが、
松岡たちが立てる物音に、慌てて穴の中へ。
しかし、その上流は浅くなっている。息を吸うのに上がりやすいので
クララが好む環境だが、
松岡「クララ、僕の胸に…いや僕のタモに飛び込んでおいで」
長瀬「水に入りながら話したら、体の振動が伝わるからダメ」
松岡にとっては、最も苦手な闘い。
と、長瀬が見つけた。
長瀬「あの辺、クララがいる可能性が高い?」
川のカーブの内側は流れが弱く、エサがたまる。
泳ぎが楽で呼吸の回数も減るため、クララにとって安全な場所でもある。
水面に影が映らぬよう近づき、川下と川上を塞ぐようにスタンバイ。
すると、松岡の足元にクララの影が!しかし、
松岡「そっち(長瀬の方)に行った!」
長瀬もタモを構えるが、足を取られる!
その大きな振動に驚いたのか、松岡の方へ逆戻り。
しかし、松岡のタモに入りそうになるものの、
8本のヒゲで察知して、岩の穴蔵へ身を隠す。
と、そのすぐ上流に、
長瀬「2匹いた!(川上と川下で)挟み撃ちにしよう!」
川下は浅く、逃げられない。
川上に回れば、まさに「袋のナマズ」!
そして、3人で挟み込む、しかし、タモの脇をすり抜けられ、大きな岩の下へ。
松岡「一回タモに入っても逃げられちゃう」
コイツは、過去最強の厄介者。
以前に捕えたプレコは、鎧のような皮に覆われ、
それを噛み砕く天敵が日本にはいないため警戒心が薄く、
タウナギは、振動に敏感だが、食欲は旺盛で、
エサのミミズにすぐに食い付いた。
しかし、クララは8本あるヒゲで、比べ物にならない警戒心。
と、さっき逃したマーブル模様が!
加藤「いた!」
松岡、すかざず網を入れて
松岡「よっしゃ!まず一匹」
すると、この状況を敏感に察知した外来種たちが、
加藤「パニックになって、息を吸いに水面に出てきてますね」
慌てると代謝が高まり、余計に酸素を必要とする。
加藤「今がチャンスです」
ロックオンした一匹を浅瀬に追い込み、松岡と長瀬のタモで、
さらに混乱させる!そして、
松岡「捕まえた!よーし」
しかし、油断してると、地面に置いたマーブルが、
松岡「本当に歩いてる!」
このままでは、歩いて逃げて行きかねない。
胸びれの脇に鋭いトゲがあり、コレを足の代わりに地面に引っ掻け、
体をくねらせて歩く。
加藤「(トゲに)毒は無いといわれている」
さらに、その上流は
加藤「魚が遡上してますね」
長瀬「ほとんどプレコとティラピアだね」
推定5百匹。後々、コイツらも美味しく頂かねば。
と、そのティラピアの群れの中に紛れて
松岡「(クララ)2匹いた!」
ティラピラの群れにヒゲが狂ったところを
長瀬がタモで一気に2匹!
松岡「お前すごいな!2匹いっぺんに」
一方、加藤は飛び込んで衝撃を与え、パニクらせてからの
加藤「捕った!クララのオス!」
松岡「大漁(7匹)ですよ」
加藤「これで何万匹も繁殖するのを抑えられた」
では、この捕獲した厄介者を持って東京へ。
やってきたのは、フランス料理「シェ・オリビエ」。
シェフは、フランス人のオリビエ・オドス。
フランス・ボルドーに生まれ、16歳で料理の世界に。
数々のミシュラン星付きレストランを経て、
パリの名店「ラ・トゥール・ダルジャン」の副料理長も勤めた。
2000年に来日し、シェ・オリビエをオープン。
素材が主役で季節を感じるフランスらしいフランス料理で
自らも5年連続でミシュランの星を獲得している。
そんなフランスの腕利きシェフに食材を見てもらうと
シェフ「こんな魚、見たことないのでビックリです」
シェフ「ウナギは調理したことがあるが、ナマズは初めて」
シェフが生まれたボルドーは、川魚料理が伝統的。
日本では貴重なヤツメウナギも、地元の赤ワインで煮込む名物料理に。
早速、厄介者の調理開始。まずは、肉質のチェック。
シェフ「(身は)ウナギに似ていると思います」
加藤「これだけ身が赤いのは、よく動いてる証拠」
酸素を貯める赤いたんぱく質が多いということ。
シェフ「ちょっと土臭いですね」
やはり、臭いが厄介そうだが、
シェフ「魚なのに、こんな脂がのってるのは珍しい」
まるで、鶏肉につく脂肪のような黄色い脂。
シェフ「ちょっと焼いてみたいと思います」
身の縮み方は読めないので、低温から火を入れる。
シェフ「結構(焼き上がった)身は硬いです」
長瀬「陸も歩くから筋肉もすごいんだろうね」
さらに、食べてみると魚らしからぬ特徴が。
シェフ「豚肉を食べてるような食感。しっかり肉汁もある」
たっぷりの肉汁には、旨味が。
シェフ「肉自体に味はないので、スパイスなどでしっかり味を出す」
さまざまなソースで臭いを隠し、味を添えるのは、
フレンチの真骨頂だが、東南アジアからやってきたコイツの肉の硬さは、
どうやって克服するのか?
シェフ「あの肉汁がいいソースになるかもしれない」
フレンチはソースが命、その仕込みに手間暇を惜しまない。
本場・フレンチのプライドと、ミシュラン星付きの意地。
フランス料理の定番ハーブ、細かく刻んだオゼイユと
薄切りにした西洋ねぎをバターで炒めて甘さを
引き出し鶏の出汁で煮込んで、茹でたホウレン草と
生クリームと一緒にミキサーにかける。
そこへ、白ワインで煮たムール貝とその煮汁を加えクララに
足りないコクと塩気、香りをプラス。
最後に、唐辛子と柑橘類の汁でアクセントを。
ミキサーにかけ、細かい目の網で渡せば、ソースの出来上がり。
そして、塩は入れずアラだけでクララの出汁をとり脂を取り除いて、
ムール貝の煮汁と合わせる。
すり下ろした生姜とゆずで香りを加えたら、
下味を付けずに身を浸けて、マリネに。
身の中にまでじっくり染み込ませれば肉に水分が入り込み、
柔らかくなる効果も。
さらに、フランスの根セロリの皮を剥いて刻み、牛乳で煮込んで、
竹串が入る程度に火が通ったら、牛乳を捨てる。
シェフ「水で火を通すと茶色くなってしまう」
つまり牛乳を使うのは、色へのこだわり。
煮詰めた生クリームを加え、ミキサーにかけたら
シェフ「滑らかなピュレが出来上がりました」
シェフ「バターでクララをムニエルに」
それは、白身魚に使うフランス料理の技法。
小麦粉をまぶしてバターで焼くことで、旨味を閉じ込め香ばしく。
塩こしょうで下味をつけたら、切り身の骨側だけに小麦粉を。
両面に付けるより早く火が通り、香ばしさが増す。
ムース状になったバターに、粉を付けた側から焼く。
バターのコクを吸わせつつ、歯ごたえ豊かに焼いたらひっくり返し
シェフ「バターをかけてアロゼしていきます」
表の面の乾燥を防ぎながら、両面に焼き色が付けられる。
そして、出来上がった1皿目。
シェフ「“クララのムニエル"です」
長瀬「美味しい!歯ごたえあるけど柔らかくて、臭みも全然ない」
松岡「茹でた柔らかいお肉のような食感」
続いて、シェフが取り掛かったのは
エシャロット、マッシュルーム、ベーコンを炒めそこに、
出汁が出るクララのアラを。
臭みを飛ばしたら、ボルドー産のワインを注ぎ足し煮付けて
味が濃縮したところに、肉の出汁・フォンドボーを。
具材の味が十分に出たら、目の細かい網で押しつぶし最後の旨味まで絞り出す。
塩コショウで味を整えたら、豚の血を加えてバターで
まろやかさを足し濾せば、赤ワインソースに。
そして、クララをミルフィーユ状に。
クララの身の上に冷ましたソースをかけ
エシャロット・エリンギ・マッシュルームを炒めたものを
載せて臭みを消し、旨味を足す。
そこに、柔らかくポワレしたフォアグラを間に挟むようにのせたら
その上にデュクセルとクララの身をもう一段。
これをラップで巻き、70℃のスチームオーブンへ。
ミルフィーユの中心温度が48℃になるまで蒸し焼きし
シェフ「ソースの中でクララに火入れした状態」
フォアグラが形を留めつつも、溶けるような舌触りに。
2皿目は、シェフの故郷・ボルドーの味。
シェフ「“クララのミルフィーユ仕立て赤ワイン煮"です」
長瀬「淡白なクララに、クリーミーなフォアグラと酸味のソースが合う」
松岡「さっきはお肉で、今度はウナギに近い」
加藤「もう、クララにクラクラ」
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