明雄さんのにっぽん農業ノート

2011年6月19日 新潟県魚沼地区『田んぼ』

新潟県魚沼地区

  • 越後山脈と魚沼丘陵に囲まれた盆地地形
  • 日本一のコシヒカリの産地(生産量:およそ28万トン)
    *日本の年間総生産量は約846万トン
  • 米の品質を決める食味ランキングが始まって以来ずっと最高位である特Aを保つ。
    *評価基準:外観・香り・味・粘り・硬さ、総合評価

魚沼地区のお米がおいしいワケ

JAしおざわ/営農部課長 宮田 猛さん

  1. 盆地特有の気候
    昼夜の気温差が5~10℃
  2. 雪解け水
    魚沼地区は日本でも有数の豪雪地帯。その雪解け水が大量に魚野川、信濃川に注ぎ込む。 酸素を多く含み、家庭排水などによる汚染が少ないので透明度が高い。

コシヒカリについて

  • 痩せた越の国で光り輝く希望を込めて名付けた。
  • コシヒカリは昭和19年新潟県農業試験場で交配し誕生した。その後、福井で育てられ『越南17号』として新潟に戻り、のちにコシヒカリとなる。
  • もともと魚沼は沼地で米作りには適さない土地であったが、コシヒカリは肥沃すぎると高くなり倒れやすくなってしまうので、コシヒカリの栽培には適していた。

訪問した農家の方

山口 軍治さん (78歳) 南魚沼市中子

コシヒカリが作られ始めた頃から、魚沼地区で栽培をしていた。

苗踏みローラー

  • 塩ビパイプを改造して作ったお手製苗踏みローラー。
  • 苗の上を転がし、上から押さえつける。このようにいじめる事により、苗が丈夫になろうと根はりが良くなり、茎が太くなる。
  • ローラーの中に水を入れ、重さを変えて苗踏みする事も出来る。

もみ酢

  • もみ殻を200度以下の低温で蒸し焼きにする。(薫炭づくり)
  • タールと共に酸性の液体が発生するが、これをもみ酢と呼んでいる。(もみ殻の木酢液)
  • 250倍~500倍に薄めて田んぼに散布する事で虫除けや病気予防に。
  • 燃えて炭化した籾殻は土壌改良剤や育苗の苗床の用土になる。

高橋 憲一さん (59歳) 南魚沼市雲洞

労力がかからず、除草剤も必要ない水稲布マルチ直播有機栽培(お布団農法)を実践している。

水稲布マルチ直播有機栽培(お布団農法)

  1. 種籾が仕込まれた「くず綿のシート」をカラカラな田んぼに敷き詰める。
  2. そこに10cmほど水を入れると、油分を含むシートは浮く。
  3. 水を含んだ種籾は発芽し、シートを突き破り生長する。同じように、雑草も田んぼから生えてくるが、光がシートに遮断され軟弱な状態の雑草は突き破る事が出来ない
  4. 三葉が出た時に落水し、苗を着土させる。シートに押さえつけられた状態の雑草は枯れて、肥料になる。シートはおよそ50日で腐敗分解されて、肥料分になる。

明雄さんメモ

  • 秋のうちに代掻きまで終わらせられて、あとは水を抜いて乾燥させておけばいいから楽だ!
  • 雑草が生えてこないのはいい!

戸邊 秀治さん (59歳) 十日町市松之山

  • 10年前にDASH村に憧れて、茨城県から十日町に引っ越し農業を始める。
  • 機械を一切使わず、手作業で行うというこだわりを持つ。
  • 現在、日本一高いお米。(1kg=約3000円)

不耕起栽培

  • 冬の間いっさい田んぼを耕さず、常に水を張った状態にしておく。
  • 土の中の生物が活発になるので、除草剤や肥料が必要なくなり、肥沃な土になる。
  • 常に水を張っているので、耕さなくても土が柔らかい。

田植え

  • 昨年、植えた株の間に線を引き今年の苗を植える。
  • 1cmでもズレると来年以降、支障を来すため、ロープを張り、そこを基点にお手製の田植え定規を使い田植え場所を決める。
  • 苗の背丈が低いうちに田植えを行う。戸邊さん曰く、こうする事で活着がよくなり、分けつを促し、実の付きも上がる。

明雄さんメモ

不耕起栽培は村の場合、土質が違うから無理かもな。戸邊さんの田んぼの土は粘土が多く保肥力があって、肥沃だからな。

飯塚 正也さん (39歳) 南魚沼市八色原

  • 大規模な農業を営む。
  • 水田は10ha(東京ドーム2個分)
  • 30cm間隔で田植えをする「疎植」を行う。

プール育苗

  • 発芽後の苗を水に浸したまま育てる育苗法。
  • 水量や水温管理ができるので、生育の良し悪しのムラがなくなる。
  • 畑式育苗よりも根はりが良く、初期の生長が早い。

土壌

  • 八海山の火山灰土で腐植質という有機物を多く含んでいるので土が黒い。
  • 水はけが良い。

雪室倉庫

  • 冬に降った雪の冷気でお米を1年中冷やし保管する。
  • 5℃の低温で貯蔵する事によって新米からの味を損なわず、保存できる。

疎植

  • 植付株数を従来よりも減らにし、株間を広く設けて育てる栽培方法。
  • 稲の受光態勢と風通しが良くなる。
  • 30cm角間隔。

明雄さんメモ

疎植は村でも実践したい。村は盆地で風通しが悪く、空気が溜まりやすいから病気にもかかりやすい。疎植をすれば、株同士の風通しが良くなるから、いい米が出来るかもしれない。

鈴木 清さん (71歳) 南魚沼市樺野沢

  • 400年、15代と続く専業農家。
  • 魚沼地方を見下ろす棚田を所有し、100%いもち病にかからないと言う強い自信をもつ。

棚田

  • 山の斜面を生かした階段状の水田。
  • 山に囲まれた盆地の村と違い、山風が常に吹き抜けるので、いもち病を寄せ付けない。鈴木さん曰く、「100%いもち病にかからない」とのこと。

雪解け水

  • 魚沼地区は豪雪地帯であるため、雪解け水が豊富。
  • 棚田の頂上付近で、雪解け水を貯水し、管理しつつ使用している。
  • 綺麗な水にしか棲みつかないマルタニシが多く棲みついている。
    *マルタニシは準絶滅危惧種に指定されている。

土質

鈴木さんの田んぼ:粘土質が多い土壌。水持ち、肥料持ちが良い。

ぬか釜

  • 米を炊く道具。
  • 燃料は乾燥した杉の葉ともみ殻。
  • 杉の葉に着火した後は、約20~30分で炊き上げられる。魚沼地域では、昔よく使われていた。

新男米の田植え

毎年悩まされていた「イモチ病に100%かからない」という言葉が決め手になり、鈴木さんの棚田の一部をお借りして、新男米を植えさせて頂く事に。世代も促進されるし、村とは違う環境で育てる事で参考になる事もあるはず。

明雄さんメモ

  • 村とは水質が違う。村は山からしみ出る「清水」だけど、鈴木さんの田んぼは「雪解け水」。やっぱり、冷やっとした。
  • 同じ魚沼でも、始めに田植えをした戸邊さんの田んぼと土質が違った。戸邊さんの田んぼは一年中水に浸かっているから、柔かった。
  • 毎年悩まされていたいもち病には、今年はかからないんじゃないかと思う。
  • 土質も違うし水も違う、さらには風通しがよく病気にかからない。この地で新男米がどういう生長を見せるか楽しみだ!