明雄さんのにっぽん農業ノート

静岡県浜松市

浜松市は温暖な気候で日照時間が長く、気象庁発表の「全国気候表2011年」では、日照時間が日本一になった。しかし、冬は「遠州のからっ風」と呼ばれる北西の強い季節風が吹き、気温以上に寒く感じる。

白玉ねぎ農家さん
村松 林さん (80歳)

  • 白玉ねぎ研究会の会長を務める。
  • 商業高校出身、会社では経理を担当し、数字や計算が好き。
  • 元々はサラリーマン、定年退職をして、その後21年間農家をしている。
  • 玉ねぎ栽培歴は、奥さんがやっていた手伝いもしていたため、かれこれ50年程。

食べている部分

実際に食用にされているところは植物の“葉"の部分。正確にはりん葉(貯蔵葉)といい、翌年に芽を出すための栄養分を蓄えておくため葉の一部が変化したところ。栄養分を作るための光合成はしないので色が白い。
実のたまねぎは、上の葉が全部つながっている。つまり上に出ている葉の数が、玉の枚数と一緒。

黄玉ねぎ

最もポピュラーな玉ねぎで、通常、玉ねぎと呼ばれるのはこの種類。玉のしまりがよく、貯蔵に向き、辛みが強いのが特徴。現在の一大産地は北海道で、全国の生産量の50%以上を占めている。貯蔵性が高いことから、一年中店頭に出まわる。

白玉ねぎ

水分が多くて甘みがあり、辛みや刺激臭が弱くておいしいので生食に向いている。
やや扁平で、中も透明な白色をしている。あまり日持ちがしないため、期間限定品とされる。

白玉ねぎの概要

海岸に面して水はけが良い砂地の、篠原地区で盛んに栽培されている。
白タマネギは、大正初期にフランスから愛知県に伝播した。寒暖差や水分量の変化に弱く、病気にもかかりやすいため、高い生産技術が必要な白たまねぎの生産農家は全国に少ない。

苗植え

通常は白玉ねぎを栽培する際は黄玉ねぎも一緒に栽培する。だが、白玉ねぎと黄玉ねぎは同時に種を蒔くと、収穫時期が重なってしまい作業が大変なため、大体は種を蒔く時期をずらしたりして収穫する時期の調整をしている。
村松さんは、お手製のマルチに等間隔に穴を空ける道具を持っている。

栽培

栽培されるのは、温暖な気候で、海岸に近い水はけの良い砂地の畑。
日射量日本一の浜松では、アミノ酸などの養分を作り出す光合成が活発に働き、肥料が活発に養分に変換される。このため甘くなる。
白玉ねぎの方が黄玉ねぎの方が葉が細く、日光がよく当たり、風通しも良くなるため早く実が大きくなるという。

さらに玉ねぎは、水分が少なすぎても、多すぎても上手く育たない。
砂地で栽培することにより余分な水分は排除され栽培に適した水分量を残す事ができる。

栽培は全体の8割ほどがマルチによって行い、その他は露地で栽培する。

8月下旬の暖かい時期に定植するため病気、虫の被害が多い。また寒暖の差や水分量の変化に弱いため栽培が難しいとされる。

明雄さんメモ

山形のメロンの様に砂地で栽培していた。砂で栽培すると美味い物が穫れるんだ!
ジャガイモとかもキレイな芋が育つんだよ。

収穫

黄玉ねぎの用に葉が倒れたらではなく、マルチの上から手で触り、専用の定規などで玉の大きさを確認しながら収穫する。通常の黄玉ねぎの様に機械で一気にやるのではなく、白玉ねぎは柔らかく傷つきやすいため1つ1つ手作業。
収穫した白玉ねぎは一旦畑に置いて、風を当てて乾かす。これを「風乾」といい、こうすると、砂が直ぐに取れる。

選別

風乾後、鎌を地面に置き、刃を逆さにして玉ねぎの根と葉の部分を切る。
切る葉の長さを測る棒があり、長さも実から17㎝ほどと決まっている。これが白玉ねぎの白と緑のコントラストが一番きれいに見える長さだという。
袋にも工夫がされていて、中の水分で曇らない様になっており、2つに束ねて袋に入れ、出荷されていく。

明雄さんメモ

あんな立派な白玉ねぎが育つためには、やっぱりその土地の気候が大切なんだな。
あの日射しと風のおかげであんなに良い玉ねぎが育つんだ。

料理

黄玉ねぎと違いクセがなく食べやすいため、生食に適している。また、熱を加えると甘くなるがトロッとした食感になる。

オニオンスライス

最も一般的なサラダ。薄くスライスし鰹節と醤油かポン酢をかけシンプルに食べる。

白玉ねぎの甘酢和え

同じく名産の生海苔と白玉ねぎのスライスを混ぜ、甘酢で味付けをする。
さっぱりとした味わい。

オニオンリング

白玉ねぎを輪切りにし、衣をつけてさっと揚げたもの。塩をつけて食べる。熱を加えているため生の時より遥かに甘くなる。

白玉ねぎ丼

オニオンスライスをご飯の上に乗せ、温泉たまごと醤油をたらす。
シャキシャキした食感が良く合う。

明雄さんメモ

あんなに美味いとは思わなかった!辛味が全くなかったぞ!
あれは生で食べないとだめだな~スライスしたやつが一番美味かった!
新玉ねぎとも全然違ったぞ。

芽キャベツの概要

別名は「子持ち甘藍(かんらん)」と呼ばれ、静岡県が全国の約9割を生産している。
日本に入ってきたのは明治初期で、静岡での栽培が広がったのは50年程前。
地元では「子持(こもち)」「メキャ」などと呼んでいる。

松下 泰教さん (75歳)

  • 芽キャベツ栽培は昭和40年代から始めた。
  • 現在JA内で芽キャベツの部会長を務めている。

芽キャベツの特徴

芽キャベツは、キャベツの変種のひとつ。元は青汁の原料で有名なケールが起源とされる。
頂芽に球をつける普通のキャベツとは異なり、側芽が球になり、直径3~4cmの小さなキャベツが一株から50~70個つく。低温環境、高湿環境の両方によく対応する。
本格的な寒さになる、1月から2月にかけて、一番甘みが増す。

栽培

露地栽培で、天候の影響を強く受けてしまうため、始めの頃は強い風や雨に弱い。
玉を大きく均等に付けるには、木をまっすぐ立てる事が大切という。
一枚の葉に対して1個の芽キャベツが出来、葉が大きくなるにつれて実も大きくなっていく。芽キャベツは低温(12度以下)にならないと実が締まってこない。
手作業の部分が多いため、あまり大規模にできないという。

収穫

収穫の際は、収穫出来る実を一つ一つ確認し、葉が黄色くなったら収穫出来る合図。
葉っぱが対称に重なっているものが良いもので、実の下の葉を取らないと、上手く収穫ができない収穫は機械では出来ないため、すべて手作業で行う。
2月頃の寒い時期に芽キャベツを収穫すると、断面から樹液が滲み出てくる。これは寒さによって蓄えられた糖分だという。

明雄さんメモ

あんなにびっしり付いているとは思わなかった!びっくりしたな。
あそこは土が芽キャベツと相性がいいんだ。俺の畑ではあそこまで上手く育たないかもな~。

選別機

選別に使用するのはミニトマト用の機械を改良したもの。
徐々に間隔が広くなるローラーがついており、S、M、L、2L、B級品ごとに分けていくことが出来る。品質を維持するため、選別を厳しくやっているという。
選別は機械を持っている人だとトマト選別機のような機械でやり、持ってない人は「通し」という専用の定規を使う。

栄養・効能

栄養価の高い野菜で、ミネラルではカリウム、リン、鉄。ビタミンではK、B1、B2、B6、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、Cがいずれも多く含まれている。
中でもビタミンCは特に多く、レモンの1.5倍、普通のキャベツと比べると3倍以上。

料理

一般的に肉料理の飾り付けとして使われることが多いが、地元では熱湯処理をしてドレッシングやマヨネーズをかけたりして食べることが多い。天ぷらにしても美味しい。
料理のポイントは茎に十字の切れ込みを入れること。こうすることで熱が通りやすくなる。

明雄さんメモ

ガーリックソテーは初めて食べたけどすごい美味かった!
帰ってから近所のスーパーを見たけど、やっぱり松下さんの芽キャベツはすごいキレイだったな!