明雄さんのにっぽん農業ノート

長野県坂城町

大峰山、鏡台山、九竜山、五里ケ峰、葛尾山など1000m級の山々に囲まれ、千曲川を筆頭に多くの川(日名沢川、御堂川、谷川、福沢川)が流れる。
稲作のほか、果樹(りんご・ぶどう・もも)・花卉栽培も盛ん。中之条だいこん(ねずみ大根)は町の特産にもなっている。
中央高原型内陸盆地性気候。年間降水量が856.5mm(H20年)、平均気温が12.4℃(H20年)と晴天の日が多く、降水量が日本でもっとも少ない地域で、果物づくりには最高の気候条件がそろう。

お世話になった方

グリーンアスパラ農家(ホワイトアスパラづくりも参加)

滝澤 民雄さん (61歳)

8年前まで、食品メーカーで働いていたが、退職後、ご両親がかつてカーネーションを栽培していた土地を利用してアスパラを栽培し始めた。それまでの農業経験は、田植えと稲刈りくらいしかなかったが、栽培を一から始め、定植からたった6年で農林水産大臣賞を受賞した。

滝澤 清美さん (55歳)

現在は、民雄さんと共にアスパラの栽培を行なっているが、平成21年まで他の仕事をしていた。主に、出荷作業を担当している。

ホワイトアスパラ農家

深井 幸年さん (59歳)

農業歴、およそ40年。主に、リンゴを6種類栽培しており、その傍ら、ホワイトアスパラを栽培。

海野 政義さん (50歳)

主に、リンゴを栽培している。昔から、知り合いだった深井さんに誘われ、一緒にホワイトアスパラを栽培し始めた。

二木 仁さん (29歳)

グリーンアスパラを中心に、様々な野菜を栽培している。大型農場での研修を終えて坂城町に帰って来たところ、深井さんに誘われ、ホワイトアスパラを栽培し始めた。

アスパラガス

ユリ科アスパラガス属

  • 原産地は南ヨーロッパからロシア南部
  • 3月~8月頃が旬
  • 主な産地は、北海道(約18%)、長野県(約11%)、佐賀県(約11%)
  • 収穫してもどんどん新芽を出す様子から、ギリシャ語で「新芽」や「たくさん分かれる」などの意味から「asparagos(アスパラガス)」と名づけられた。

我々が食べているアスパラガスは、若い茎の部分。貯蔵根に蓄えた栄養で一つの株から出て来たものが収穫される。株が成熟すると、何年も収穫できる。日本では、グリーンアスパラガスが主流だが、ヨーロッパではホワイトアスパラガスが春の風物詩として高い人気がある。
さらに、栄養が豊富に含まれており、かつて薬草として知られていたこともある。

アスパラの歴史

南ヨーロッパ原産で、古代ギリシャ・ローマ時代では既に栽培されており、高級食材として扱われると同時に、痛風に効く薬草として重宝されていた。
江戸時代、日本に伝来したが、食用ではなく観賞用として用いられるだけで、栽培は広がらなかった。
※日本古来からあるウドに似ていたことから、「オランダウド」や、育つとキジが隠れられるように見えることから、「オランダキジカクシ」とも言われた。

主なアスパラガスの栄養

アスパラギン酸
アスパラガスの主成分。名前の由来もアスパラガスで最初に発見されたことからきている。
アミノ酸の一種でたんぱく質の合成を促進し、新陳代謝を活性化させ、疲労回復やだるさを解消。また、アンモニアを体外に排出し、尿の合成を促進する利尿作用や体内でカリウムやマグネシウムなどのミネラルを運ぶ働きもある。

サポニン
サポニンには、ガン細胞の増殖抑制作用や強心作用があるといわれており、さらに血液サラサラになる効果があるとされている。ホワイトアスパラガスは日光にあてないように栽培するため、グリーンアスパラガスに比べると栄養素は全体的に少なめだが、サポニンについては、ホワイトアスパラガスの茎や根に多く含まれているといわれる。

アスパラガスの各部の名称と働き

茎:1株から10~30本ほど発生する。

葉(鱗片葉):茎の節についている三角形の部分。ハカマと呼ばれ、若茎が伸びる時に先端部を保護する役目がある。
(葉は退化し、僅かに残る程度。光合成はしない。)

偽葉:アスパラガスの若茎が生長すると、松葉のような細かい葉が生い茂る。これは茎が変形したもので、光合成を行ない、地下部に養分を送り込む。

貯蔵根:茎でつくられた養分を貯蔵する部分で、地下茎から発生して、やや横に伸びる。土壌条件がよければ4~5年で2~3m程度に達す。
※茎が出て、光合成を行なうまでの生長用に使われる。

成長のサイクル

春:種蒔き期(3月)
育苗は、一般的にポットに行う。発芽適温の25℃を確保した場所に置いてれば、10日程度で発芽、60~80日後(5月頃)に定植。

夏:養分蓄積期(6月~9月)
茎が伸びて光合成を行ない、養分を蓄積する。この時期、茎で生産された養分は茎葉を繁茂させるために使われ、地下部の貯蔵養分としては蓄積されない。

秋:養分転流期(10~11月)
秋、地上部の茎葉に蓄積されていた養分が貯蔵根に転流する時期。地上部の黄化が始まる10月上旬から、枯れ上がる11月下旬頃にかけて。茎葉が完全に枯れあがったら刈り取る。

冬:休眠期(12~3月)
地下部に養分が転流しきった時点から、翌年春の萌芽までの時期。休眠は、0~5度以下の低温に1000時間程度遭遇することで打破されるが、気温が上昇してくる春までは萌芽しない。

翌春:萌芽期(4~5月)
若茎が地下茎から芽を出す時期。
若茎が萌芽を始める温度は5度前後だが、平均気温が10度以下だと萌芽はまばら。12度を超える頃から揃って萌芽し始める。長野県は五月上旬のゴールデンウィーク前後、北海道中央部では五月中旬頃。
一度株を作ってしまえば、毎年とり続けられるのがアスパラの大きな特徴。
収穫量は8~10年目でピークを迎え、その後、どんどん衰えていくが、中には30~40年も収穫できる畑がある。
DASH村でのアスパラ栽培

いいアスパラガスの選び方

まっすぐ伸びているもの。
ハカマの形は正三角形のものが生育状態がよいとされる。
軸がまん丸。

アスパラガスは太いほうが旨い?

スーパーでは、4本で100gのモノが主流だが、太いもののほうが、果肉(白色部分)が多いため、旨み成分が多く甘いといわれる。

外敵

モグラの特徴
眼は退化しているため小さく視力はほとんどない。
聴覚が発達しているが、耳は外見からは見えない。
※土から伝わる音や振動を嫌がる。人が土の上を歩くだけでもその音や振動で逃げる。
地下で穴を掘って暮らすため前足は大きく発達し鋭い爪がある。土をかくため横向きについているので、地上ではあまりうまく扱えない。
主食は土中のミミズや昆虫。1日で体重と同じだけのミミズを食べなければ生きられない。
※およそ50~100g
冬でも冬眠せずエサを探し続ける。

ネズミの特徴
基本、夜間に行動するため、聴覚などの感覚機能が発達している。
※外敵から身を守るために夜に行動しているだけで、明るい場所でも物を見ることができる。
歯は一生伸び続け、口をふさぎ餓死することもあるので、いつも何かをかじっている。
人の食べる物なら何でも食べる。
集団で縄張りを持ち、モグラの穴を利用して、移動する事も多い。

農業機械

畝間作業車
アスパラの収穫や運搬に最適なコンパクトな電動畝間作車。
歩いても座ったままでも走行操作が可能。
※座った場合は足元のペダルで前後に走行できる。

アスパラ自動選果機
アスパラガスのカット機能付き重量選別機
アスパラを22~27cmの長さに切りそろえ、自動的に重量による6段階の選別を行うアスパラ専用の選別機。
※操作はアスパラを受け皿に乗せるだけなので簡単。

ホワイトアスパラガス

銀河の貴婦人

長野新幹線建設のために本線のそばに掘られた作業用トンネルを利用してホワイトアスパラを栽培している。修了後はふさぐ予定だったが、坂城町が1996年に旧鉄建公団から譲り受け、2002年からホワイトアスパラガスの実験栽培に着手。2003年に初出荷し、「銀河の貴婦人」と名付けられる。

市場の規格と値段

収穫したあとも、自身の栄養分を消費して成長を続けてしまう性質があるため、鮮度が落ちやすい。
特に、ホワイトアスパラは鮮度が落ちやすく、店頭に並べていると先端から緑色に変色する事も。

調理

グリーンアスパラガスは硬い根元の部分の皮を切り、ホワイトアスパラガスは表皮が硬いので、穂先を残して皮を剥く。茹でる際に皮も一緒に茹でるとより風味が残る。

茹で時間
グリーン…1~2分
ホワイト…4~5分

アスパラとホットドッグにして食べた鹿肉の特徴

脂肪の少ない赤身の肉で、味は牛肉に似ている。
繊維が細かいので柔らかい。
脂肪分が少ない。
しっかりと血抜きをすれば、生臭さや獣臭さは無くなり、フランス料理でも高級食材として扱われているぐらい、美味しい。
高タンパク、低カロリー、そして、ヘルシー。